クラシエ、高岡工場に「DSF Cyclone」を導入 現場の主体的な改善文化を醸成

2025年9月30日10:05|ニュースCaseHUB.News編集部
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 クラシエは、漢方薬の最終製造工程を担う高岡工場に、マクニカの製造現場DXサービス「DSF Cyclone」を採用した。9月29日、同製品を提供し導入を支援したマクニカが発表した。急増する漢方薬の需要に対応するため、製造現場のデータ活用基盤を整備し、継続的な改善活動が可能な"考える現場"への変革を進める。今後は他工場への横展開も視野に入れ、全社的なスマート工場推進の土台を築く方針だ。

 クラシエの薬品事業が提供する漢方薬は近年、テレビなどで紹介される機会が増え、需要が急増している。同社は、従来の生産手法や設備投資だけではこの需要増に対応することが困難な状況に直面していた。特に、高岡工場では製造設備とシステムは連携していたものの、リアルタイムのデータが記録として残らず、改善活動の基盤となる情報が蓄積されていなかった。また、設備の停止理由を示す信号だけでは不十分で、現場作業者の判断や意見も記録できる仕組みが求められていた。

 こうした課題を解決するため、クラシエはコストや運用負担を抑えつつ、現場の知見とデータをつなぎ、継続的な改善を可能にする仕組みの構築を目指した。複数のシステムを検討した結果、データの収集、可視化、改善支援を一貫して行える点を評価し、DSF Cycloneの採用を決めた。

 DSF Cycloneの導入により、製造現場ではリアルタイムで設備の状態を監視できるようになった。これにより、収集したデータを活用し、異常検知から復旧に至るまでの判断スピードが短縮。具体的かつ数値に裏付けられた改善策を迅速に実行できる体制が整った。生産効率の向上に直結するルール変更もデータに基づいて行われるようになり、継続的な改善サイクルが確立された。

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DSF Cycloneによるリアルタイム監視のイメージ

 現場作業者からは、積極的な意見やコメントが増加し、意識改革も進んでいる。改善会議ではデータに基づく具体的な情報を共有しながら活発な議論が交わされるようになり、「指示待ち」ではなく自ら課題を発見し解決策を考える「作業者主体の"考える現場"文化」の醸成につながった。この文化の醸成は、組織全体の改善力強化と継続的な生産革新の推進基盤になっている。

 導入効果が実証されたDSF Cycloneを活用したデータ可視化・分析環境は、高岡工場内の複数製造ラインに展開され、今後は他の工場への横展開も積極的に進められる計画だ。これにより、各拠点で収集されたデータが統合され、全社的なスマート工場推進の基盤構築が着実に進んでいる。

 導入にあたっては、マクニカが一貫した伴走支援を提供した。データの収集から可視化、活用方法の設計までをリードし、現場が本当に必要とする形で情報を整備・提供した。現場の課題に寄り添い、作業者の行動変容を促す環境づくりを支援したことが、改善活動の質とスピードの大幅向上に貢献した。

 クラシエ 薬品カンパニー 薬品SCM室 高岡工場 技術開発課 情報技術推進係 係長の土合修平氏は、導入後の変化について、「『やれと言われてやる』のではなく、『自分たちで"見て、考える"』という文化が、少しずつ育ってきたと感じている」と語る。また、「スマート工場化を通じて、生産効率を上げて、トラブルを未然に防げるようになれば、それが結果として安定供給につながる。そうやって社会に貢献していくことが、私たちの責任だと思う」と述べ、安定供給を支える力として工場のスマート化を継続する考えを示した。

 高岡工場では今後、製剤工程にもDSF Cycloneによる可視化範囲を広げる計画だ。最終的には、あらゆる製造設備の稼働情報をリアルタイムで把握できる「見える工場」を目指す。クラシエ全体としても、各工場の情報をバーチャルにつなぎ、現場ごとの課題に対して全社で最適解を共有・創出できるスマート工場推進の未来像を描いている。

ニュースリリース