DTSは、金融機関向けマネーロンダリング(資金洗浄)対策パッケージ「AMLion(アムリオン)」の基盤として、アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)のマネージド型Kubernetesサービス「Amazon Elastic Kubernetes Service(EKS)」を採用した。12月19日、導入を支援したスリーシェイクが発表した。コンテナ技術の活用によりシステムの可用性と信頼性を高め、すでに2案件の受注につなげるなど、ビジネス面でも大きな成果を上げている。
DTSは、金融犯罪対策を重要領域と位置づけ、日本語対応や高度な照合機能を強みとするAMLionを展開している。近年、金融機関からはリアルタイムでの取引モニタリングや高い可用性が求められるようになり、システムのパフォーマンス維持と安定稼働が課題となっていた。また、顧客からEKS利用の強い要望があったこともあり、最新のクラウドネイティブ技術への対応と、それらを自社で運用できる体制の構築を目指した。
パートナーの選定にあたっては、技術力に加え、自社内にナレッジを残す「伴走型」の支援スタイルを評価し、スリーシェイクのSRE(サイト信頼性エンジニアリング)支援サービス「Sreake(スリーク)」を採用した。
プロジェクトでは、開発者が自由に試行錯誤できる「サンドボックス環境」の構築から着手した。インフラをコードで管理するIaC(Infrastructure as Code)を導入することで、環境の再現性と透明性を確保。さらに、リリース作業の信頼性を高めるため、新旧システムを並行稼働させて切り替える「ブルーグリーンデプロイ」を実現する構成を整えた。具体的には「Argo Rollouts」と「Linkerd」を組み合わせ、トラフィック制御を自動化することで、障害時の即時切り戻しを可能にした。
スリーシェイクによる技術移譲の結果、DTSのエンジニアはコンテナ環境の構築・運用ノウハウを習得した。従来は他社製品に対する優位性の構築に苦心していたが、コンテナ対応を明確に打ち出せるようになったことで、競合優位性が向上。IT部門を持つ顧客に対しても自信を持った提案が可能になり、短期間で2件の新規受注を実現した。
今後は、現在の構成をベースにマイクロサービス化を推進し、さらなる可用性の向上を目指す。また、人手による作業が多いマネーロンダリング対策業務の効率化に向け、AI(人工知能)の活用も検討していく方針だ。
DTS金融事業本部金融ソリューション推進部ソリューション開発担当 担当部長の森岡智氏は、「我々だけで取り組んでいたら立ち行かなかった。技術面や基盤面の話に及ぶケースも多々あるが、すぐに相談できる安心感があり、非常に助かった」と話している。