やまびこは、製造現場におけるデータ主導の意思決定への転換などを目的に、マクニカの製造現場DXサービス「DSF Cyclone」を横須賀事業所に採用した。8月5日、マクニカが発表した。これまで現場の経験に頼っていた判断をデータに基づいて行うことで改善活動の精度を高め、生産管理の効率化と安定稼働につなげている。今後は国内外の拠点への展開も視野に入れ、グローバルな生産体制の最適化を目指す。
やまびこは、森林・農業・緑地管理向けの屋外作業機械を展開する総合メーカーで、横須賀事業所はエンジンの鋳造から組み立てまで一貫生産を行う基幹工場として位置づけられている。同社は2021年に「ITインフラ整備」を全社方針として掲げたことを機に、横須賀事業所でのデジタル化を本格的に推進。しかし、これまで現場主導で行ってきたExcelによる日報集計や手作業でのデータ計測では、分析や活用に人手や専門知識が足りず限界があった。また、ライン数が多いため改善活動の横展開にも課題を抱え、手作業に依存する体制は持続可能ではない認識があった。
DSF Cycloneの採用にあたり、やまびこ独自の全社的な生産方式である「YAPS(Yamabiko Production System)」との親和性の高さが決め手となった。YAPSは「無駄の排除による経営効率の向上」を目的とし、長年にわたり同社の改善文化の中核を担ってきた。一方、DSF Cycloneは、生産現場の状況や設備の稼働状況をリアルタイムで可視化し、データに基づく自律的な改善活動を推進できる。この「データドリブンな自律的改善」という考え方がYAPSの理念と合致し、やまびこの改善文化をさらに深化させる共通言語になると判断した。
導入により、従来は現場の感覚や経験に頼っていた判断を、DSF Cycloneが示すリアルタイムデータで裏付けられるようになり、数値に基づく確かな根拠を持った意思決定が可能になった。これにより、改善活動の精度と効果が向上した。横須賀事業所の生産ライン横にはモニターが設置され、生産計画と実績の差異や設備停止情報、単位時間あたりの生産量などを即座に確認できる仕組みを構築。異常発見から対応までの時間が短縮され、生産管理の効率化と安定稼働を実現した。
こうした取り組みは、現場作業者の意識にも変化をもたらしている。作業者が主体的にデータ活用や改善提案に参加しやすい環境が整い、成果が目に見えることでやりがいや達成感が高まり、現場には考える文化が根付き始めている。やまびこは、スモールスタートに適し横展開しやすいDSF Cycloneの特性を生かし、今回の横須賀事業所での取り組みを、海外拠点も見据えた「見える工場」実現への第一歩と位置付けている。