霧島酒造、現場主導の内製アプリ開発で業務効率化とDXを推進

2025年3月27日23:04|ニュースCaseHUB.News編集部
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 霧島酒造が「Claris FileMaker」を業務効率化とデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進を目的に採用した。3月27日、Claris Internationalが発表した。

 霧島酒造は、芋焼酎「黒霧島」をはじめとする本格焼酎を製造する創業100年を超える老舗メーカーだ。黒霧島は、年間製造量は一升瓶換算で約5000万本に上る。近年、ライフスタイルの変化による市場縮小といった外部環境の変化を受け、同社内では持続的な事業継続と新たな価値創造に向けた変革の必要性が高まっていた。

 2021年の社内アンケートで業務のデジタル化の遅れが明らかになったことを背景に、霧島酒造は同年、「あじわいDX」(製販プロセスの変革)、「くつろぎDX」(顧客体験の向上)、「ひとづくりDX」(従業員体験の向上)という3つのDXの柱を策定。2022年4月にはDX推進本部を設立し、全社的なDXを本格始動させた。

 DX推進本部設立と同時期、焼酎粕リサイクルプラントを管轄するグリーンエネルギー(GE)本部が、機械整備報告書のデジタル化を試みた。複数のノーコード・ローコード開発ツールを比較検討した結果、操作性やコストパフォーマンス、内製化の容易さ、拡張性が評価され、Claris FileMakerが採用された。

 導入はGE本部の設備保全課から始まった。当初は担当者1名がClaris FileMakerの無料評価版を用い開発に着手し、後にもう1名が加わり2名で報告書作成アプリの開発が進められた。シンプルなアプリだったため、比較的容易に開発できた。その後、現場の社員からアプリ開発の要望が相次ぎ、プラント運用に関する点検記録アプリの開発にも着手した。開発は、Clarisパートナーのサポータスの技術支援を受け、現場のフィードバックに基づいたアジャイル方式でUIなどの改善が重ねられた。

 開発された「プラント日報/機器点検記録表」アプリの導入で、報告書作成業務はiPadやiPhoneで撮影した写真を直接登録し、現場でデータ入力するだけで完了する。転記ミスや入力漏れがなくなり、作業工数は約25%削減された。また、異常値の早期発見や、記録確認依頼メールの送信機能による連絡ミス低減も実現し、入力と押印の電子化により製造ラインへの紙やペン、印鑑の持ち込みが不要となり、異物混入リスクを回避し「FSSC22000」の認証取得にも貢献した。紙帳票の削減と高い検索性は、業務効率化にも寄与している。

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iPad で入力できる「プラント日報/機器点検記録表」アプリ

 グリーンエネルギー本部の丸野貴充氏は、「紙からiPadになったことで、点検にかかる入力や報告業務を効率化しています。異常が発生した場合の情報共有も、記録を見ながらリアルタイムで会話ができるようになり、報告や相談も素早くできるようになりました。過去のデータをiPadからその場で見返せるのは、多くの機器がある現場では、とても効率的です」と述べている。

 2022年末頃には、GE本部の栗山修平氏からDX推進本部へClaris FileMaker活用による業務デジタル化の全社展開が提案された。これを受け、当時同本部へ異動した財津将平氏が全社展開に着手した。2023年4月から希望する部署への導入が始まり、当初56ライセンスでアプリ開発と運用が開始された。

 導入部署にはハンズオン形式の勉強会が実施され、栗山氏も指導役を担った。その結果、現在では製造や酒質管理、ボトリング、品質保証、SCMなど10を超える部署で利用が進み、1年後にはライセンスが100に増強、現在はClaris FileMakerを利用する社員は、全社員約640人の半数にのぼる。開発に携わる社員も約30人に増え、全社でDXに取り組む文化が浸透している。

 財津氏は「社内ではFileMaker以外にもツールを導入していますが、FileMakerならではの簡単な操作性に加え、目に見えて業務効率化が進んでいることが分かることから、どの部署でも積極的に活用している印象です」と評価している。

 酒質管理部では、検定酒評価をiPhoneで入力しており、「味わい」データのデジタル化と仕込みデータの連携により、商品開発のスピードと精度の向上が期待されている。霧島酒造は、焼酎粕や芋くずを利用したバイオガス発電や、その電力を電気自動車の社用車に充電し利用するなど、自然の恵みを大切にする取り組みにもClaris FileMakerを活用している。検査記録の過程でClaris FileMakerとiPadを活用することで、データの検索や過去のデータとの比較・分析が容易になった。

 DX推進本部の大久保昌博氏は、「100年以上続く焼酎メーカーとして、次の100年も続くためには、小さな成功を積み重ね伝承していくことです。バイオテクノロジーの分野でも、デジタルの分野でも小さな成功 "Quick Win" を続けていくこと、そして変化を恐れず、新しいことにチャレンジしていくことが大切だと思います」と今後の展望を語る。

ニュースリリース


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