広島県府中市は、人口減少や少子高齢化を見据えた持続可能な自治体運営を目的に、生成AI型AI-OCR「GenOCR」を採用した。7月9日、同サービスを提供するジンベイが発表した。住民の手書き申請書を高精度に読み取ることで職員の入力ミスや負担を軽減したほか、ITに詳しくない職員でも直感的に操作できる環境を整え、庁内におけるデジタル文化の醸成につなげている。今後は過去の類似事例を迅速に検索できるナレッジ基盤としての発展や、個人情報を扱う業務への拡大を目指す。
従来、多くの自治体では人口減少や少子高齢化が進むなか、行政サービスの質を維持しながら業務を効率化することが共通の課題となっている。府中市においても持続可能な自治体運営を目指してデジタル化を推進してきたが、高齢者への配慮などから紙の申請をゼロにすることは難しく、紙とデジタルを両立しながらいかに業務を効率化するかが問われていた。こうした現場の課題を解決するため、同市は広島県主催のオープンイノベーションプログラムを通じてジンベイの提案を選定し、2026年より実証を開始した。
こうした背景から同市は、最も頻度が高い住民の手書き申請書を対象とした検証を実施した。達筆な文字や独特のクセがある文字も高い精度でデータ化できることを確認したほか、選択項目に付けられた丸の位置がズレたり枠からはみ出したりしていても正しく判別できた。これにより、従来職員が手作業で行っていたデータ入力時間を削減した。また、手書き書類だけでなく、建築や土木系の部署で扱う細かな図面からの情報抽出や、既存システムが出力した数値帳票の読み取りにも活用し、入力ミスの防止に役立てている。
GenOCRは複雑な範囲指定やコード記述を必要とせず、画面上で普段使っている日本語のプロンプトを入力するだけで読み取りの指示ができる。このシンプルな操作性により、システムに詳しくない職員でも迷わず利用でき、事前の職員向けオンライン説明会でも前向きな意見が多く寄せられた。実証を通じて、同ツールで正確に文字を読み取った後の複雑な計算や処理は別のツールに任せるという、実務に即した運用の切り分けが進んだことも大きな収穫だとしている。
府中市総務部DX推進課プロセス改革担当監の伊藤健志氏は、「GenOCRは作りが非常にシンプルなので、システムに詳しくない職員でも直感的に理解できます。この『最初の一歩で躓かない』ことは本当に重要です。現場と導入側の双方に寄り添ってくれるツールであり、私たちが目指す『DXの文化』を根付かせるのに一役買う存在になってくれると期待しています」としている。