フィリピンでプラントエンジニアリング設計を手がけるDASH Engineering Philippines(DASH)は、ウイングアーク1stが提供するデータ分析基盤「Dr.Sum」を導入し、22部署から提出される週次レポートの管理業務を効率化した。レポートの透明性や社内のガバナンスも高まっているとしている。11月21日、ウイングアーク1stが発表した。
DASHは三井E&S(旧三井造船)の100%子会社。三井E&S向けに機械事業の設計業務をサポートしながら、日本や欧米の企業にプラント/機械設計の外販もしている。社員約400人のうち360人がエンジニアで、22の部署に分かれさまざまなプロジェクトを進めているという。
従来、各部署のリーダーは、管轄するプロジェクトの進捗予測や実績などをまとめた週次レポートをExcelファイルで作成し、社長と品質管理部のリーダーに個別にメールで提出していたが、レポート管理にはいくつかの課題があった。
誰がいつレポートを提出したのかを把握するのが困難だったことに加え、過去のレポートと最新のレポートを比較する際には、過去のメールを一つずつ確認する必要があり、作業が煩雑だったという。さらに、各部署でのレポート作成プロセスがブラックボックス化しており、正確性や詳細さに不安があった。
品質管理部リーダーのレスリー・バツラン氏は従来のやり方の問題点について「リーダーごとに報告書の形式が異なり、標準化が困難だった。過去の報告書の追跡や取得に苦労し、複数部署が関わるプロジェクトの進捗把握も難しかった。未提出を見逃してしまうこともあった」と説明する。
DASHはこれらの課題を解決するため、長年の開発パートナーであるN-PAX Philippines(N-PAX)の提案を受け、Dr.Sumを導入した。N-PAXはウイングアークのシンガポール現地法人と事業提携しており、Dr.SumとN-PAXが提供する人事管理システムなどとのスムーズな連携が可能だった。さらにN-PAXはDASHに日次作業実績を記録するシステムを提供しており、同システムのデータや部門リーダーが管理する作業計画を基に、Dr.Sumを使って週次レポートを一括管理できるシステムを提案した。
Dr.Sumを活用したN-PAXの提案を採用した理由について、DASHの社長である志賀浩治氏は「N-PAXとの20年来の付き合いによる信頼」「現地パートナーによるオンサイトサポートが受けられる安心感」などを挙げる。導入にあたって他社製品との比較検討は行わず、「まずスピード導入して問題があれば後から対処すればいいという方針」だったという。
2023年2月から両社で開発要件の検討を始め、4月にシステム開発をスタートした。構築にあたって志賀氏は「詳細データは下の層に入れ、必要なデータがすぐに一覧で見られるUI」をつくることにこだわったという。バツラン氏が主導し、リーダーが扱うExcelファイルの標準フォーマットを作成するなど、並行して新たな運用ルールづくりも進めた。
2023年11月に週次レポートシステムが完成し、部門リーダーへのトレーニングを経て、本格運用が始まった。Dr.Sum導入の効果について、志賀氏は「レポートの提出状況がすぐに把握でき、プロジェクトごとの部署間比較も容易になった。分かりやすいUIでメンバーが記した報告の根拠まで直接確認できるようになり、問い合わせや手間のかかる調査がなくなった」と説明している。作業時間の短縮効果にとどまらず、心理的な負担の軽減にもつながっているほか、レポートの透明性やガバナンスの向上にも寄与しているという。
DASHは今後、Dr.Sumの活用範囲をさらに広げる意向。エンジニアの空き状況をリアルタイムに把握できる要員検索システムを構築する方針だ。