ソフトバンクは、鈴鹿サーキットで開催されたF1日本グランプリで、5G SA(スタンドアロン)とミリ波を活用した五つの通信サービスの同時実証に成功した。6月17日、実証を共同で進めたエリクソン・ジャパンが発表した。大規模イベントでの通信品質向上と、用途に応じたネットワーク制御の有効性を検証した。これにより一般ユーザーの通信速度が向上したほか、厳格な要件を求める映像伝送や決済の安定稼働を実証した。
大規模イベント会場では、ソーシャルメディアへの投稿や動画の視聴、運営側の映像伝送、キャッシュレス決済など、多種多様な通信需要が同時に発生する。今回の実証では、ソフトバンクの商用ネットワーク上にミリ波無線(28GHz帯などの高周波数帯を用いた5G通信)を含む五つの独立したネットワークスライス(用途ごとに論理的に分割された仮想ネットワーク)を構築し、会場内のユーザーへ同時に提供した。特定の用途に適正化された通信を提供するとともに、一般来場者の通信品質の向上も目指した。
実証したサービスは、5G SAユーザー向けの高品質通信、XR体験会用のスライス、店舗の決済端末向けのプライベート5G回線、ソフトバンクとワイモバイルユーザー向けの公衆Wi-Fiサービス、放送事業者向けの無線カメラ映像伝送の五つだ。基盤として、省エネと大容量通信を両立するトリプルバンド対応の無線機を導入し、緻密なネットワーク設計を行った。
実証の結果、前年の大会と比較して通信速度と接続容量が向上した。一般のソフトバンクユーザーの比較では、5G SA利用者の通信速度がダウンロードで4倍、アップロードで14倍以上向上した。また、ネットワークスライシングとエリクソン独自の「5G Advanced機能」を活用することで、用途に応じた帯域や遅延の制御、リソース配分の適正化に成功した。特に低遅延が求められるXRでは、無線区間の遅延を一般の5G SAユーザーの10分の1に抑えた。さらに、一部の基地局でサービス品質を1分間隔で可視化し、外部制御によってリソースを高速で自動配分する自動最適化運用も実証した。混雑によるトラフィック増加時にも、それぞれの品質要件を自動で満たせることを確認した。
今後は、今回の実証で得られた知見を基に、用途に応じて適正化された通信体験と新たなサービス価値の創出に向けてネットワークを進化させる。ソフトバンクの常務執行役員でCNOを務める大矢晃之氏は、今回の実証はネットワークが一律の提供から用途に応じた最適な品質を提供する時代へ進化していることを示すものだとし、今後もこの成果をさまざまな領域へ展開し、新たな体験価値の創出につなげていきたいと語った。