GMOインターネットは、主要サービスのデータベース基盤をOracleのクラウドサービス「Oracle Cloud Infrastructure(OCI)」に移行した。12月11日、日本オラクルが発表した。オンプレミス環境からの移行により、ITインフラコストを約15%削減できる見込みだ。あわせてバックアップ時間の大幅短縮や柔軟なリソース管理を実現し、事業継続性の強化やAI活用の基盤整備につなげる。
GMOインターネットは、ドメイン登録やクラウド・レンタルサーバー、インターネット接続など、グループのインフラ事業を担う中核企業。約951万件の契約数を有する大規模なサービス群を支えるため、従来はオンプレミス環境の「Oracle Exadata」をデータベース基盤として運用していた。
しかし、データ量の増加に伴い、バックアップ処理に約20時間を要するなど、月次処理スケジュールとの調整が常態化していた。また、メモリを最大まで割り当てていたため新規データベースを迅速に追加する余地が乏しく、新サービスの展開に制約が生じていたほか、システムが特定の拠点に集中することによる災害リスクや、オンプレミスでの災害対策(DR)環境構築にかかる高額な投資コストも課題となっていた。
そこで、可用性や性能を維持しながら、柔軟性の向上とコスト最適化を図るため、クラウドへの移行を決断した。複数の選択肢の中から、既存のExadata資産との親和性が高く、システム改修を最小限に抑えられる点や、マルチテナント・アーキテクチャによる高いセキュリティと柔軟性を評価し、OCIの「Oracle Exadata Database Service」を採用した。移行プロジェクトは2024年2月に決定し、25年5月に本稼働を開始している。
OCIへの移行により、データベース運用の効率は大幅に改善された。OCIの機能を活用してバックアップ時間を約90%短縮したことで、月次処理との競合が解消された。また、ピーク時に合わせたCPUリソースの柔軟な配分が可能になり、パッチ適用やセキュリティ・アップデートにかかる工数も削減されている。これらにより、オンプレミス環境と比較して約15%のコスト削減を見込んでいる。
事業面では、トラフィックの急増に対する拡張性が確保されたほか、新規サービス展開に必要なシステム余力も生まれた。セキュリティ面でも、「Oracle Cloud Guard」などを活用して可視化と監査のプロセスを強化している。
今後は、OCI上にDRサイトを構築し、さらなる事業継続性の強化を図る計画だ。また、DRサイトのデータを分析用途に活用することも視野に入れている。AI活用に関しては、現在「Oracle Autonomous AI Database」を用いたデータ分析基盤の実証実験(PoC)を進めており、自然言語によるデータ分析など、意思決定の高度化に向けた取り組みを加速させる。
GMOインターネット インフラ技術部ミドルウェア技術チームマネージャーの市村元識氏は、「移行を機に、従業員が誰でもデータを活用できる環境を整える『データの民主化』を促進し、その基盤となるMCP(Model Context Protocol)の活用に取り組んでいる。迅速かつ客観的な意思決定を可能にすることで、業務プロセスの効率化や新たなビジネス機会の創出につなげていきたい」と話している。