トヨタ、Google CloudとのハイブリッドクラウドでAI活用を加速

2024年9月9日07:45|ニュースリリース公開日 2023年6月23日|ニュースCaseHUB.News編集部
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 トヨタ自動車は、製造現場の従業員が自らAIモデルを開発できる「AIプラットフォーム」を、オンプレミス環境とGoogle Cloudを組み合わせたハイブリッドクラウド上に構築した。2023年6月23日、Google Cloudが明らかにした。

 世界的な自動車販売台数を誇るトヨタは、生産力強化策の一つとしてAI活用を重視しており、約2年前から製造現場への導入を積極的に進めてきた。しかし、AI開発には専門知識やスキルを持つ人材が不足していることに加え、近年は計算リソースの確保も困難な状況にあった。

 トヨタは2022年初頭、AIの専門知識がない製造現場のスタッフでも、自ら必要なAIを開発できる「AIプラットフォーム」を内製することを決定した。開発、運用基盤には、クラウドサービスの積極活用による開発効率の向上と、コスト抑制の観点から、オンプレミス環境とGoogle Cloudを組み合わせたハイブリッドクラウド方式を採用した。 オンプレミス環境にはAnthosクラスタを導入し、Google Cloud上のGKE(Google Kubernetes Engine)クラスタと連携させている。

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ハイブリッド・クラウドアーキテクチャのイメージ

 トヨタ 生産デジタル変革室 AIグループ グループ長の後藤広大氏は、「AIプラットフォームの開発、運用基盤にハイブリッドクラウドを選択したのには2つの狙いがある。1つはクラウドのサービスを積極的に活用することで、メンバーが本来やるべき機能の開発に専念できるような環境を用意すること。もう1つはコストの抑制だ」と語る。

 AIプラットフォームでは、開発チームがアジャイル開発の中でも特にシンプルなフレームワークであるスクラムを採用している。スクラム開発では少人数のチームで機能を少しずつリリースしながら開発を進めていくため、脆弱性の確認が大きな工数的負担となる。Google Cloudのセキュリティ関連サービスを活用することで、脆弱性対策と開発者の負担軽減を両立させた。

 トヨタ 生産デジタル変革室 AIグループ シニアエキスパートの小島浩氏は、「クラウドと連携する経路については、社内のインフラ環境と合わせて構築していく必要があり、Cloud NATを活用することでGKEとAnthosを繋いだ。また、各Kubernetesクラスタ内のサービスアカウントはWorkload Identityを使ってクラウドのIAMに定義されたサービスアカウントと紐付けて動かすことで、セキュアな運用ができるようにしている」と説明する。

 2022年6月に稼働を開始したAIプラットフォームは、利用者が順調に増加しており、AIプラットフォームで開発されたモデルがWebアプリケーションとして多くの現場に導入され、成果を上げ始めている。

 トヨタは今後、AIプラットフォームの機能を拡充し、グループ会社など外部への提供も検討していく。後藤氏は、「現場には目視検査以外にもさまざまなニーズがある。製造現場や現場への実装を担当する部署のメンバー、今後提供していくグループ会社の皆さんとも協力しながら、『AIの輪』を少しずつ拡げて行くのがAIプラットフォームの長期的な目標だ」と述べている。