関西医科大学は、スマート病院構想と医療デジタルトランスフォーメーション(DX)の加速を目的に、日本アイ・ビー・エムと共同で「医療AI共通ICTプラットフォーム」を開発した。7月8日、日本アイ・ビー・エムが発表した。具体的な診療支援サービスの第一弾として医師・看護師向けの「生成AIサマリー作成支援アプリケーション」の実運用を開始し、看護サマリーの作成時間を従来比で6分の1に短縮するなどの成果を出している。
関西医科大学は大阪府枚方市に位置し、関西医科大学附属病院、関西医科大学総合医療センター、関西医科大学香里病院の3病院を擁する学校法人だ。医療の質向上と医療従事者の働き方改革の両立を目指し、デジタル技術を駆使したスマート病院構想を進めている。今回のシステム開発にあたっては、日本アイ・ビー・エムが提供する「病院業務支援AIソリューション」を活用した。
同法人ではこれまでにもAI問診システムや生成AIを活用した患者対応システムなどを導入し、成果を上げてきた。しかし、さらなる次世代のスマート病院へと進化を遂げるためには、最先端のAI活用シーンを広げる「AI・医療データ中核基盤」の確立が必要であった。また、医師や看護師における各種サマリーなどの文書作成業務は深刻な負担となっており、定型的な事務的作業の効率化が課題となっていた。
こうした課題を解決するため新たに開発された共通ICTプラットフォームは、附属3病院で個別にシステムを構築することなく、高度なAIアプリケーションを迅速に横展開できる柔軟かつ安全なAI実行基盤をクラウド上に構築した。さらに、将来の医療連携や臨床研究への発展を視野に入れ、国際標準規格「FHIR」に対応した医療データ連携基盤を導入。異なる電子カルテシステムとの接続も可能にしている。セキュリティ面では、機微な医療データをどこからでも安全に利用できるよう、ゼロトラストネットワークにおける堅牢な認証・認可基盤を確立した。
実運用を開始した生成AIアプリケーションは、富士通製の電子カルテシステムとクラウド上のプラットフォームを連動させ、電子カルテ内の情報を安全に取り込んで「看護サマリー」「退院サマリー」「外来サマリー」の作成を支援する。AIが自動作成した文章はそのまま診療記録とせず、医療従事者が最終判断するプロセスを経ることで正確性を担保している。
同システムの活用により、従来は30分程度を要していた看護サマリーの作成時間が5分で完了するなど、事務作業の削減を達成した。これにより、医療従事者がより患者中心の診療に注力できる環境を創出し、働き方改革にも貢献している。
今後は、本プラットフォームをエンジンとしてAIアプリケーションのラインアップをさらに統合・拡充していく。蓄積された医療データの利活用や臨床研究支援、データ駆動型の病院経営の高度化を推進し、地域医療への貢献を目指す。さらに、本プラットフォームの活用が全国の病院に広がることで、各種ICTシステムをより効率的かつ経済的に導入できるようになることが期待されている。