中古車販売店「ガリバー」を運営するIDOMは、商談領域のAIエージェント開発基盤として、SalesforceのAIエージェントプラットフォーム「Agentforce」を全面的に採用した。10月26日、セールスフォース・ジャパンが発表した。先行して導入した「自動追客AIエージェント」で、成約に至らなかった顧客への再提案を自動化し、年間約60億円の新たな売上創出を見込む。
IDOMは2030年に向けて、AIエージェントを活用した商談と商品調達の改革を進めている。生成AIやAIエージェントの進化で顧客接点や業務プロセスが大きく変わる中、中古車業界でも従来の競争優位性だけでは顧客に選ばれ続けるのが難しくなるとの認識から、「Gulliver AX宣言」を掲げ、AIを活用した顧客体験と事業プロセスの変革に取り組んでいる。
同社の国内中古車小売市場でのシェアは約6.5%で、さらなる成長には顧客接点の最大化と成約率の向上が欠かせないとしている。そこで、売上・利益に直結する「商談」と「商品調達」の2領域で自律型AIエージェントの開発を進めており、このうち商談領域をSalesforceが支援する。問い合わせ対応から来店時の接客・商談支援、商談の可視化、不成約顧客の商談化まで、一連のプロセスにAIエージェントを活用する。
IDOMは2025年1月に発表したCRM(顧客接点システム)の再構築でSalesforceを採用しており、「Sales Cloud」「Service Cloud」「Automotive Cloud」「Slack」など幅広い製品を利用している。今回は、AIエージェントの開発・展開のしやすさと投資対効果に加え、顧客接点からデータ活用、分析までを一貫して支えるプラットフォームである点を評価した。「Data 360」と「Databricks」のゼロコピー連携を基盤に、既存のCRMに蓄積した顧客データや業務データを従業員とAIエージェントがともに活用できる環境を整える。
また、Salesforceのインサイドセールス向けAIエージェント「Piper」を、パイロット顧客として日本で初めて導入する。Piperは24時間365日、問い合わせに即時に応答し、顧客のニーズを把握したうえで適切な店舗や営業担当者につなぐ。顧客分析や経営管理では、Databricksと「Tableau」を連携させ、顧客接点から得たデータと事業データを横断的に分析する。
先行して導入した自動追客AIエージェントは、Salesforce上のデータを起点に「LINE」で顧客と自動で対話し、再提案の機会を探る。商談の可能性がある場合は店舗の担当者に引き継ぐ仕組みで、年間売上の約1%に当たる約60億円の売上創出を見込んでいる。今後は、納車時の案内やアフターサービス、車検・乗り換えの提案など、購入後の顧客接点にもAIエージェントの活用を広げる計画だ。AIを省人化やコスト削減の手段にとどめず、事業全体の生産性と競争力の向上につなげる方針だという。
IDOM AX戦略本部チームリーダーで、IDOM Intelligence & Technology社長の野原昌崇氏は「AIエージェント技術の出現を大きな外部環境変化と捉え、AX宣言を発表した。当社は中古車業界のリーディングカンパニーだからこそ、『イノベーションのジレンマ』に陥るリスクが大きいと認識している。当社自身がゲームチェンジャーになる覚悟でAXを実現していく」と話している。