大鵬薬品工業は、製薬業界特有の厳格な品質管理業務における効率化と業務プロセスの最適化を目的に、エンタープライズ・ローコードプラットフォーム「intra-mart Accel Platform」およびBPMツール「IM-BPM」を採用した。7月7日、ツールを開発・提供する株式会社NTTデータ イントラマートが発表した。複数システムや紙媒体に分散していたデータ収集・確認作業を横断的にデジタル化したことで、出荷判定にかかる作業時間を74%、製品品質照査の作業時間を78%削減した。
大鵬薬品工業は、大塚グループに属し、「チオビタ・ドリンク」や「ソルマック」などのコンシューマーヘルスケア領域の商品で広く知られるほか、独自の創薬プラットフォームを強みに革新的な医療用医薬品、特に抗がん剤領域において強みを持つ製薬会社である。同社ではかねてよりデジタルテクノロジーを積極的に活用しており、徳島県の北島工場においてMES(製造実行システム)やLIMS(試験室情報管理システム)、品質イベント管理システム、文書管理システムなどを随時導入し、業務のデジタル化を推進していた。しかし、各システムが独立してデータを管理する「システムのサイロ化」が進んだ結果、これらを横断してデータを活用する業務において工数が膨大になるという課題が顕在化していた。
特に、医薬品の安全で高品質な安定供給を担うGMP(適正製造規範)のもとで実施される製品の出荷判定や、1年間の品質データを包括的に分析する製品品質照査といった重要業務では、人手による作業の非効率性が大きな負担となっていた。各システムの履歴をたどるデータ収集や、収集したデータの再整理を手作業で行っていたため、手間と時間がかかるだけでなく、データインテグリティ(データの完全性)を確保するための目視による突き合わせ確認工数の増大や、局所的な業務プロセスの暗黙知化も課題だった。
同社は全社的なDX推進の機運のもと、GMP業務を横断的にシステム化するプロジェクトを2023年後半に始動させた。製薬業界特有の厳格なGxP要件への対応を前提とし、業務プロセス管理(BPM)の概念に基づいてシステム化できる製品を比較検討した結果、「intra-mart」の採用を決めた。全社的なシステム連携やバリデーションのしやすさ、国際標準のBPMNによる業務プロセスの可視化・デジタル化が可能な点に加え、自社の統制下で仕様変更や変更管理を行える運用環境の選択性、指示文章や開発費用などにおけるコスト優位性が選定の決め手となった。
導入にあたっては、同社のパートナーである日本テクノ開発が開発を支援し、基盤整備からアプリケーション開発までを約4カ月で進行した。プロジェクトの成功には、事前の要件定義を徹底して言語化・ドキュメント化し手戻りを防いだことや、単に既存のプロセスをデジタル化するのではなく、プロセスの棚卸と精査を同時に行い、ワークフローが差し戻された際の「戻りプロセス」まで網羅して最適化したことが貢献した。
新システムは現在、北島工場の製造、品質試験、品質保証、設備、ITの5部署で運用されている。導入効果として、データ収集やまとめ作業が自動化され、マニュアルなしでも直感的に扱える環境が整ったことで、出荷判定で74%、製品品質照査で78%という数千分単位の業務時間を削減した。さらに、アナログなデータ収集や紙媒体の取りまとめが不要になり、作業ミスとその排除のための確認作業自体が解消されたほか、情報共有メールの自動発信、ユーザー部門自身でのマスタ登録・更新機能により、運用効率が向上した。
同社では今後、今回のシステム構築を起点として、徳島工場や埼玉工場といった別拠点への展開や、社内の他業務における汎用的なワークフローシステムとしての運用拡大を見据えている。また、将来的にはAIエージェントの台頭と混在する未来を見据え、人とAI、システムを包含して管理する業務プロセス基盤としてのさらなる進化に期待を寄せるとともに、今回の開発で得た知見を活かして、日本テクノ開発が構想する製薬業界向けパッケージ製品の開発にも協力し、業界全体のエコシステム形成へ貢献していく。