近鉄百貨店は、オンプレミス環境の基幹システムと新規導入したSaaSとのデータ連携を目的に、セゾンテクノロジーのクラウド型データ連携プラットフォーム(iPaaS)「HULFT Square」を採用した。6月3日、セゾンテクノロジーが発表した。データ連携業務の内製化により、従来は数カ月を要していた開発期間を数週間に短縮したほか、1000万円規模のコスト削減を達成した。
近鉄グループの中核企業として関西圏を中心に百貨店を展開する近鉄百貨店は、近年、フランチャイズ事業の拡大や農業事業への参入など、ビジネスの多角化と収益構造の改革を推し進めている。こうした変化に迅速に対応するためIT基盤のクラウド移行を進めており、かつて数カ月かかっていたサーバー構築などを自社でスピーディに行える環境の整備に注力していた。
この先進的な取り組みの過程で、経理部門が導入を決めたSaaSの経費精算システム「TOKIUMインボイス」と、オンプレミスで運用する基幹システムとのデータ連携において課題に直面した。従来のシステム間連携はファイル連携ミドルウェア「HULFT」によるファイル転送で行われていたが、新たなSaaSとの接続にはAPIを用いる必要があった。接続方式の異なるシステムを連携させるには、APIサーバーの新規構築や認証・セキュリティの設計など、多くの技術的な障壁を越える必要があり、限られた人員で対応するには時間とコストの負担が大きいことが懸念されていた。
選定にあたっては、すでに別システムでHULFTを用いたファイル連携の実績と経験があった安心感を評価した。さらに、基幹システムが置かれているAWS環境とHULFT Squareを接続する際、外部に環境を公開せずセキュアな通信経路を確保できる「AWS PrivateLink」を活用できる点も決め手になった。本格稼働に向けた実証実験で、短期間での本稼働の目処が立ったことから導入を決めた。
導入プロジェクトは約6カ月間のスケジュールで進められたが、データ連携基盤そのものの構築はきわめて短期間で完了した。開発は、自社の担当者1名とパートナー企業のメンバー1名という極めて少数のチーム体制で、スクリプト作成から実装までを内製で完結させた。
新システムでは、TOKIUMインボイスに入力された仕訳データがAPI経由でHULFT Squareへ送られてデータ変換され、基幹システムへ自動で連携される。逆に、基幹システム側のマスターデータもHULFT Squareを通じて経費精算システムへ自動登録・更新される仕組みを構築し、経費精算業務の完全デジタル化を実現した。APIサーバーを外部へ発注した場合に想定された1000万円規模の開発費や数カ月におよぶ開発期間を抑え、月額費用のみの最小限のコストで迅速に連携環境を確立できた。
今後は、構築したデータ連携基盤を活用し、さらなる業務内製化を推進する方針だ。すでに「BigQuery」に蓄積されたグループ全体の購買データなどの抽出・分析への活用や、人事システムから「Google Workspace」への組織・社員異動情報の自動反映など、様々な社内システムとの自動連携の拡大を視野に入れている。