全国共済農業協同組合連合会(JA共済連)は、地域貢献活動の支出判断業務を効率化するため、Google CloudのAIエージェントプラットフォーム「Gemini Enterprise」を採用した。3月30日、Google Cloudが発表した。年間数百件にのぼる問い合わせへの回答支援に生成AIを活用し、業務負荷を20%から50%程度削減することを見込んでいる。
JA共済連は「相互扶助」の理念のもと、全国のJAと連携して総合保障の提供や地域社会づくりに取り組んでいる。同会が直面しているのは、2040年までに日本の労働人口が大幅に減少するという「2040年問題」だ。将来的な職員数の減少を見据え、質の高いサービスを維持するために生成AI技術を活用した業務効率化が喫緊の課題となっていた。
効率化の対象となったのは、各県域での地域貢献活動における積立金の支出可否判断業務。この業務は一般的な共済事業と異なり明確な約款がなく、過去の事例と照らし合わせながら個別かつ総合的に判断する必要があるため、回答までに時間を要していた。また、ガイドラインの解釈が担当者によって異なり、判断基準に差が生じるリスクもあった。文書による照会だけで年間200件から300件、さらに毎日の電話問い合わせへの対応が部署の大きな負担となっていた。
システムの構築にあたっては、パートナーである富士通の支援を受けた。短期間での成果創出とアジャイル的な開発が求められたため、ノーコード・ローコードで構築可能なGemini Enterpriseが選定された。2025年7月の開発着手からわずか1週間から2週間でプロトタイプを完成させ、約1.5カ月という短期間で実用的な精度を実現した。
開発では、Gemini EnterpriseのAgent Development Kit(ADK)を活用した。ガイドラインや過去3年分、約600件の照会票データをナレッジとして学習させている。精度向上のための工夫として、AIに照会内容から争点を洗い出させた上で回答を生成させる手法を採用した。これにより、担当者の思考プロセスに近い回答が可能になった。また、個別の照会データを独立したファイルとして管理することで、文脈を維持した適切な回答を引き出せるようにした。
導入の効果として、AIが判断の根拠を明確に提示することで回答の均質化や平準化が図れる点が高く評価されている。チャット形式による直感的な操作性も、現場の受け入れを容易にした。削減された時間は、より質の高い地域貢献活動の企画や分析に充てられる計画だ。
JA共済連農業・地域活動支援部地域貢献企画管理グループ主幹の市川豪氏は、「将来的な職員減少への対応として業務効率化は有効な手段だ。生成AIの活用で現状を大きく改善できる期待がある。今後は他部署へも横断的に展開し、組織全体の効率化を図りたい」と語る。
今後は問い合わせ業務に限らず、営業推進や査定、支払いなどバリューチェーン全体でのAI活用を検討している。また、現場の担当者が自らAIエージェントを作成・調整できる体制の構築も目指す。新しいテクノロジーを駆使して組織変革を進め、より多角的な地域貢献を目指す。