駅やビルなどの清掃・保守を手がけるJR東日本環境アクセス(JEA)は10月1日、JR千葉駅直結の商業施設「ペリエ千葉」で、AI画像診断型CBM(状態基準保全)システムを活用した清掃を開始した。スマートフォンで撮影した床面の画像をAIが診断し、熟練清掃員の「匠の目」と同等の精度で美観状態を判定する。従来の時間基準による画一的な清掃から、床の状態に応じた最適なタイミングで清掃する方式へ移行することで、品質を維持しつつ、労働力不足という業界全体の課題解決を目指す。
清掃業界では、超高齢化社会を背景とした労働力不足が深刻化しており、事業継続に向けた抜本的な解決策が求められている。JEAは従来一般的だった、一定期間ごとに行う時間基準保全(TBM:Time-Based Maintenance)から、設備の状態に応じてメンテナンスを行う状態基準保全(CBM:Condition-Based Maintenance)への業務変革を構想。マクニカと共同で具体的な取り組みを進めてきた。
両社はまず、業界で標準化されていなかった清掃の要否を判断するための品質評価基準を策定。さらにスマートフォンで床面を撮影するだけで、AIが熟練者の判断と同等の精度で美観を判定するCBMシステムを開発し、データの取得から清掃計画の策定、実施までを一貫して行う新たな業務オペレーションも構築した。
これらの取り組みにより、AIによる客観的な評価に基づき、最適なタイミングで清掃を実施するCBMへの移行が可能になったという。商業施設や駅など複数の施設での検証を通じて、汚れやすい場所を重点的に清掃するといった新たな運用でも施設の美観を維持できることが証明されたため、今回のペリエ千葉への本格導入に至ったとしている。
実際の運用では、現場の清掃員が定期的に所定の場所の床を撮影し、CBMシステムで評価結果を確認する。評価が設定した基準を下回った場合にのみ、その結果に基づいて清掃計画を策定し、対象エリアの清掃を実施する。
JEAとマクニカは今後、まず床の定期清掃におけるCBMを社会実装することで清掃文化の変革を促し、人件費に比例しやすいコスト体質からの脱却と、持続可能な事業運営の基盤を確立したい考えだ。将来的には、他の清掃業務にもCBMの考え方や技術を応用し、より広範な社会課題の解決に貢献していく。なお、今回開発したCBMシステムは特許出願中で、清掃業界の新たな標準を目指すという。