JTB旅連事業は、全国の宿泊施設を対象とした食材調達のデジタル化(DX)推進に向けた取り組みを強化している。その一環として、インフォマートと業務提携し、同社の「BtoBプラットフォーム 商談」内に、宿泊施設と生産者・加工食品業者をつなぐ「旅館・ホテル向けマーケットプレイス」を開設した。10月30日、インフォマートが発表した。このマーケットプレイスは、開設から約半年で200社以上が利用しており、宿泊施設と生産者・加工食品業者双方の業務効率化と新規取引創出に貢献している。
同マーケットプレイスは2025年3月の開設以来、利用が進んでおり、約半年で買い手となる宿泊施設と、売り手となる生産者・加工食品業者がそれぞれ約100社、あわせて200社以上が参加している。取引件数も毎月着実に増加しており、宿泊業界の食材仕入れや調達先の開拓方法に変化をもたらしている。
マーケットプレイスの活用は、宿泊施設と生産者・加工食品業者の双方にメリットをもたらしている。宿泊施設はマーケットプレイス内で全国各地の生産者・加工食品業者から良質な食材を適正価格で調達できる。調達先の選定や価格交渉を通じて、安定した供給ラインの確保と調達コストの最適化が可能となる。また、Web発注による発注作業時間の削減や購買管理の効率化が実現し、業務負担の大幅な軽減につながる。
売り手である生産者・加工食品業者にとっては、宿泊業界への新たな顧客基盤の獲得と販路開拓が可能になる。地方の業者でも地理的な制約なく全国規模での取引や市場拡大ができるようになり、安定した取引量で価格コントロールができる販路を確立できる。
同マーケットプレイスは、「黒毛和牛特集」や「朝食特集」など、商談・提案のテーマに沿って食材を発掘・比較できる特集コーナーも設けている。これにより、宿泊施設側は提案を受けやすくなったとの声が多く、食材調達業務のデジタル化の効果を実感している。
実際に活用した事例として、京都山科 ホテル山楽は、既存の仕入れルートでは発掘が難しかった京都らしい食材について、オンライン商談で京都産の「ゆずたま」をスムーズに契約へ結びつけた。その結果、「ここでしか食べられない朝食」として宿泊客の満足度向上と新規仕入れ先の獲得に成功した。また、宿泊業界との接点が限られていたタカダは、オンライン商談を通じて買い手のニーズを把握しながら商品提案を実施し、2件目の成約に成功した。同社にとって、宿泊業界への販路拡大の大きな足がかりとなった。
インフォマートとJTB旅連事業は今後、季節ごとの特集コンテンツの充実や、成功事例のさらなる蓄積・共有を通じて、宿泊業界における食材調達業務のデジタル化を加速させる方針だ。また、地域の特産品と宿泊施設を結びつけることで、地産地消の促進や地域経済の活性化、フードロスなどのSDGsやCSR活動への貢献も目指す。