KDDIは、QRコード決済サービス「au PAY」の内製アジャイル開発向けに、AIエージェントを組み込んだ企画・要件定義の支援システムを構築した。支援ベンダーとしてはグロース・アーキテクチャ&チームス(Graat)を選定し、同社のAIエージェントデザインサービス「EBAAD」を活用。4月27日、Graatの親会社であるグロースエクスパートナーズが発表した。熟練者の暗黙知をAIによって再利用可能にすることで、属人化に起因する品質のばらつきを解消したという。企画部門と開発部門のコミュニケーションの質を高め、より本質的な要件の議論などに時間を充てたい考えだ。
KDDIはau PAYの内製アジャイル開発を推進する中で、AIを開発プロセスに活用する取り組みを進めてきた。しかし、企画や要件定義の領域では、熟練した担当者や開発者が持つ判断や進め方のノウハウが属人化しやすく、担当者によって成果物の品質にばらつきが生じていた。業務要件やシステム影響、関係者視点などを踏まえた判断は経験豊富な人材の暗黙知に支えられており、ドキュメントの整備やトレーニングだけでは組織全体に展開することが困難だったという。
こうした課題を解消するため、KDDIはGraatの支援を受け、AIを組み込んだバックログ(要件・タスクを優先順位付きで整理した開発計画リスト)の作成支援システムを開発した。システムの構築にあたっては、熟練人材のノウハウをAI活用によって業務プロセスに組み込むコンサルティングサービスであるEBAADを採用。AIを単なる作業効率化のツールとするのではなく、企画・要件定義の進め方や人とAIの役割分担そのものを見直し、AIが思考支援と作業代行を担う仕組みを整えたという。
構築したシステムは、目的や手段の関連性を検証して情報の不足や論理的整合性の確認を支援するほか、関連システムなどの前提知識を補足する機能を備える。さらに、エンドユーザーやエンジニアなど複数の立場からのシミュレーションレビューも可能で、担当者本人だけでは気づきにくい論点の検討を促すという。こうしたプロセスを経て整理された要件を基にバックログ草案を生成してチケット管理ツールへ登録する一連の作業をカバーする。
これにより、経験の浅い担当者でも一定のクオリティを担保した形で要件定義を進めやすくなり、熟練者への過度な依存が緩和されたという。KDDIパーソナル事業統括本部システム開発本部アジャイル開発部副部長の藤木潤氏は、「当初はAIによる作業効率の向上を期待していたが、業務の進め方を見直す中でそれ以上の価値を実感している。論点をそろえやすくなったことで、企画部門と開発部門の間でより本質的な議論を進めやすくなった。AIは個人の生産性を高めるものとして語られがちだが、組織としてよりよい判断や連携を支える役割も大きい」と語る。このシステムはau PAYに関わる複数チームで運用されており、同社は今後さらに対象範囲を拡大する方針だ。