東急、kintone AIで会計ナレッジ共有を効率化 現場主導の業務改善を加速

2026年6月3日09:00|ニュースCaseHUB.News編集部
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 東急は、多角的な事業展開における全社的な業務効率化や現場主導のデジタル活用推進を目的に、ノーコード・ローコードツール「kintone」の生成AI機能である「kintone AI」を採用した。6月2日、サイボウズが発表した。専門的なIT知識に依存しない環境を構築したことで、属人化していたナレッジ共有や検索性の向上による新人育成の効率化、アプリケーション作成の迅速化といった効果が報告されている。今後は伴走支援を通じて現場主導のAI活用を全社へ定着させ、さらなる業務効率化と新たな事業機会の創出を視野に入れている。

 交通事業を基盤に、沿線開発や生活サービスなど幅広い事業を手がける総合企業の東急では、多角的な組織におけるデジタル活用の推進が経営課題となっていた。こうした背景から、同社では2025年2月に市民開発事務局を設置し、IT人材に依存しない現場主導の業務改善を進めてきた。しかし、毎期の決算で繰り返し発生する特有の会計論点に関するナレッジが属人化しており、過去の判断経緯を迅速に確認できない状況が業務効率や品質の面で課題となっていた。

 特に同社では、さまざまな事業を営んでいるため、毎年のように特有の会計処理が頻繁に発生していた。しかし、各担当者が検討した会計論点(会計処理や財務諸表作成において、一意な判断ができず検討や合意が必要になる事項)を共有フォルダに保存するのみで体系的に管理されておらず、過去にどのような検討があったかを調べるには、記憶に頼って年度ごとのフォルダを一つずつ探すしかないという属人的な状況であった。このように過去の判断経緯を迅速にたどれないことは、業務品質にも影響しかねないという課題を抱えていた。この課題解決に向けて、自然言語で情報を蓄積・検索できるkintone AIの検索AIを用いて、会計関連のナレッジを体系的に蓄積・参照できる仕組みを整備することとなった。

 実際の取り組みとして、財務戦略室主計グループでは検索AIを用いて、会計論点や社内ルール、用語、実施ビジネス概要に関する資料を蓄積・検索できる仕組みを構築した。言い回しや用語の揺れが多い会計論点や、馴染みの薄い不動産関連の用語であっても、自然言語による検索によって必要な情報へ迅速にたどり着けるようになったとしている。同アプリには560件を超えるレコードが蓄積されており、単体決算だけでなく連結決算チームも含めた主計グループ全体での横断的な活用が進んでいる。また、検索AIが資料の内容まで読み取って出典元のページを提示することで、対応メンバーの交代が多くナレッジが定着しにくかった組織において、新人育成の効率化にもつながっている。

 一方、市民開発事務局ではアプリ作成AIを活用している。事業部門からの相談時に、ヒアリングした要件をその場でアプリ作成AIに入力し、即座にアプリの雛形を作成して見せる取り組みを進めている。これにより、従来のように一度持ち帰ることで相手の熱量が下がってしまうのを防ぎ、現場からは「自分たちでアプリを作れたことが自信につながった」といった声も上がっている。

 AI活用推進における課題としては、データの整え方に関する社内ルールの共有や、社内データ整備の不足、現状維持志向の意識などが挙げられている。一方で、同社ではkintoneやAIを活用して業務を効率化していくことが会社の目標であり、文化として定着しつつあると位置付けている。今後は、市民開発に取り組む部門の事例を広く共有し、自分事として捉えてもらうことを重視する。現在60を超えるプロジェクトに対する伴走支援を通じて成功体験や失敗事例を共有し、セキュリティガバナンスを確保した環境のもとで全社的なAI活用の拡大を目指すとしている。

 東急デジタルプラットフォームITソリューショングループ参事の千野陽太氏は、AIを導入して業務効率化や新規ビジネスを検討するには、まず実際に触れてもらい、できることとできないことを理解してもらう必要があると説明する。今後は、これまでのユースケースをどのように社内に広げて能動的な活用を促していくかが課題だとし、生成AIを推進するチームと連携しながら取り組みを進めていく考えを示している。

 また、財務戦略室主計グループ参事で公認会計士の熊井佑一氏は、日常的に利用しているkintoneにデータを蓄積しておくだけでAIが回答を提示する体験を通じて、データ蓄積の重要性を実感してもらえると指摘する。将来的にAI活用が一般的になった際、現在の段階からデータを蓄積し始めていることが差別化要因になるとの見方を示し、kintoneの活用を財務戦略室全体に広げ、ナレッジを共有しやすい環境を整備していきたいと述べている。

ニュースリリース