ポケトークは、新たなAI通訳プラットフォームの共通API基盤として、KongのAPI管理プラットフォームを採用した。11月12日、Kongが発表した。法人向けビジネスの強化を見据え、マルチクラウド環境でのエンタープライズセキュリティと外部連携の安全かつ効率的な実現を目指す。
ポケトークが開発する独自のAI通訳エンジン「Prism Language Systems」は、音声、テキスト、画像など多様な入力データをAIで解析し、リアルタイムで多言語通訳を実現する中核技術である。同社はこれまで個人利用を想定した迅速な開発体制を特徴としてきたが、企業向けサービスへの展開にはより高いセキュリティ要件と運用ガバナンスが必要になっていた。
これまでのAI通訳プラットフォームでは、各サービスで認証や認可が個別管理されており、セキュリティポリシーの一貫性が低いという課題があった。また、フロントエンドとバックエンドが密結合していたため、AI通訳エンジンやサービスの切り替えが困難だったことや、IP制御、プロトコル管理、ログ運用が分散し、監査や保守の負担が増大していたことも課題だった。このため、通信経路の標準化とセキュリティ強化を目的として、Kong API Gatewayを活用した新アーキテクチャへの刷新を進めた。
Kong採用の決め手は、将来的なマルチクラウド展開を見据えたベンダーロックインの回避と、エンタープライズレベルのセキュリティ・コンプライアンス対応力であった。Google Cloud環境での構築を前提としながらも、クラウドに依存しないオープンアーキテクチャを持つKongを採用することで、AWS、Microsoft Azure、オンプレミスなど将来的な拡張に柔軟に対応できると評価した。さらに、機密データを扱う政府機関や企業の要件に応えるFIPS 140-2準拠の暗号モジュールを備えている点や、日本のデジタル庁推奨のAPI Gatewayとして高い信頼性を持つ点も採用理由に挙げられている。
加えて、Google Cloud Marketplaceとの包括契約を活用し、Kong導入の際の新規稟議や承認プロセスを省いて迅速な導入が可能になったこと、OIDCやOAuthなど多様なプロトコルをサポートし、顧客企業ごとの認証要件に対応できる柔軟性、そしてWebSocketを活用したリアルタイム通信での低遅延かつ高スループットの実現といった性能面も評価ポイントとなった。
ポケトークは今後、法人顧客が安心して利用できるエンタープライズ向けAI通訳プラットフォームを構築し、グローバル展開を加速する方針だ。特に米国市場では、多民族・多言語社会に対応するため、マルチリージョン対応や英語、スペイン語、ハイチ語など多様な言語間通訳の精度向上に注力する。
ポケトークのチーフプロダクトオフィサーである恒遠玄崇氏は、今回の採用について「病院や学校、政府機関などエンタープライズな業務領域でAI通訳サービスを活用してもらっており、KongのAPIプラットフォームはセキュリティ、拡張性、スピードのすべての面で理想的な基盤だ」とコメントしている。今後はKongが開発を進めるAI GatewayのMCP(Model Context Protocol)対応にも期待を寄せ、安全かつ統制されたAIエージェント連携の実現を目指す。