LayerXは、アトラシアンのITサービスマネジメントツール「Jira Service Management」およびユーザー管理ソリューション「Atlassian Guard」を採用した。11月12日、導入・運用を支援したリックソフトが発表した。部門ごとにばらつきがあった社内問い合わせ窓口の一元化と、対応の効率化を実現した。導入から約1年で利用者数が当初の想定から10倍に拡大するなど、IT部門を起点にビジネス部門へも活用が広がっている。
LayerXは、「すべての経済活動を、デジタル化する」をミッションに掲げ、AIを中心としたソフトウェア体験を提供するスタートアップ企業である。急成長に伴い部署間の連携業務が増加する一方で、社内の問い合わせ窓口は各部署独自の運用となっており、対応や管理にばらつきが生じていた。
従来はAPIを使ってコミュニケーションツール「Slack」と情報共有ツールを連携させ、簡易的なチケット管理を行っていたが、問い合わせの増加とともに対応が追いつかなくなり、メンテナンス負荷が増大。部署や担当者ごとにチケットの保存方法が異なり、対応履歴を活かせないケースが多く、効率化が進まなかった。また、社員にとっても「どこに問い合わせをすればよいか」が分かりにくい状況が続き、問い合わせ対応者と社内ユーザー双方の負担が増加していた。
こうした課題を背景に、LayerXは問い合わせ管理の仕組みそのものの見直しを決断。基盤刷新にあたり複数のITサービスマネジメント(ITSM)ツールを比較検討した結果、「Jira Service Management」の採用を決めた。
選定理由としては、ITILに準拠した構成があらかじめ備わっており、初期段階からスムーズにチケット管理を始められる使い勝手の良さが魅力だった。また、業務の中心に据えるSlackとの連携性が高く、Slack内でチケットの起票から対応まで完結できる点も決め手となった。さらに、問い合わせをする側の社内ユーザーにライセンス費用がかからない点にコストメリットを感じた。
導入支援を担ったリックソフトについては、前職での支援実績から、新しい機能やサポートが充実している印象が強く、自社だけではカバーしきれない情報もキャッチアップしてもらえる点が評価された。
Jira Service Managementの導入により、チーム全体での問い合わせ対応が標準化され、未対応チケットや回答漏れが減少。対応状況の可視化や月次・四半期単位での傾向分析も可能になり、継続的な業務改善につながっている。セキュリティ強化の観点から導入したAtlassian Guardにより、SAML認証によるシングルサインオン(SSO)と多要素認証を組み合わせたユーザー認証強化も実現された。
また、業務の中心であるSlackと連携することで、誤ったチャネルで起票された問い合わせも適切なチームへ簡単に振り分けられるなど、コントロール可能な状態が実現した。同社は外部のAIと組み合わせた一次対応の自動化にも取り組み、問い合わせ内容に応じたナレッジベースの参照先提示や、初回返信文のAI代行による要件整理の自動化で、対応時間の大幅な短縮を達成している。
今回の導入効果はIT部門にとどまらず、ビジネス部門へも波及し、問い合わせ業務を担う部門が自発的に活用を始めた。LayerXコーポレートエンジニアリング室 IT基盤グループマネージャーの篠嵜洸氏は、ビジネス部門の社員がユーザーとして問い合わせる際に「Slackで全て完結できる便利さ」を実感したことが、展開拡大の要因だと語る。
篠嵜氏は、リックソフトからの支援について、「提案の質が高いだけでなく、知見の共有もしていただけるため、短期間で多くのノウハウを得ることができた」と評価している。また、リックソフトが独自に作成・販売する管理者向けガイドブックや技術情報の発信も、自社だけではカバーしきれない情報をキャッチアップする上で役立っている。
今後は、Jira Service Managementに搭載されている生成AIアシスタント「Rovo」の活用や、AIを活用した次世代の問い合わせ管理のあり方に挑戦し続けたい考えだ。