J-REITなどの運用を手がける伊藤忠リート・マネジメントは、LegalOn Technologiesの法務向けAI「LegalOn」を2026年3月に本格導入した。実質2人で年間約300件の契約審査を担うなか、外部の法律事務所とのやりとりを含む社内外の法務案件を一元管理し、AIによる修正案の作成や過去の契約書の検索で審査を効率化した。導入から3カ月で約120件の審査手続きをLegalOn上で行い、対応件数を可視化した。11月5日、LegalOn Technologiesが導入事例として公開した。
伊藤忠リート・マネジメントは、「アドバンス」ブランドの賃貸住宅特化型J-REITや総合型私募REITの運用、私募ファンドのアセットマネジメントなどを手がける総合資産運用会社だ。独立した法務部はなく、執行役員のコンプライアンス・オフィサーとコンプライアンス・リスクマネジメント室の計3人が法務を担い、契約審査は主に2人で対応する。契約審査は年間約300件、法務相談は月10件程度に上る。ファンドビジネスの不動産売買契約は表明保証や契約不適合責任の範囲など細かな調整が必要で、物件ごとに文言を精緻に組み立てなければならない。
従来は社内グループウェアのチャットで相談や審査依頼を受け付けていたが、月に何十件も依頼が来ると進捗の管理が難しくなっていた。ファンドごとに担当者が異なるため、過去に回答した内容と同じ質問が別の担当者から寄せられることもあり、ナレッジを十分に生かせていなかった。営業担当者が外部の法律事務所に直接依頼する案件も多く、外部への依頼はOutlook、社内からの相談はチャットやTeamsとツールが分かれ、案件全体を把握しきれていなかった。
決め手は、営業担当者や外部の法律事務所の運用を変えずに、社内外の案件を一元管理してナレッジ化できる「マターマネジメント」の仕組みだった。コンプライアンス部門のグループアドレスにLegalOnの案件受付用アドレスを登録するだけで、営業担当者と法律事務所のメールのやりとりが自動でLegalOnに蓄積される。法律事務所にIDを付与したり新しいシステムを使ってもらったりする必要がない。社内に蓄積された1万件以上の締結済み契約書を、AIに自然言語で問い合わせて活用できる点も評価した。2025年10月に無料トライアルで検証し、12月に試験導入を経て、2026年3月に本格導入を決めた。
導入にあたっては、案件の多い秘密保持契約、契約書、法律相談の3種類について専用の受付フォームを作り、必要な項目を明示して追加のヒアリングを減らした。契約の最終チェックも変わった。決裁ワークフローに上がったファイルが、コンプライアンス・リスクマネジメント室で確認した最終版と一致しているかをLegalOnの比較機能で確かめている。以前は担当者同士の信頼関係を前提に目視で確認していたが、今は誤ったファイルの添付や、共有されていない修正にもすぐ気づける。
日常業務では、Word上でLegalOnの機能を使える「Wordアドイン」を活用している。相手方へのコメントに使う修正案のたたき台をAIがすぐに示し、ボタン一つで変更履歴付きで本文に反映できる。「LegalOnアシスタント」では、物件や相手方などの手がかりから過去の類似案件を探し出せるようになり、判断理由を素早く確認できるようになった。
今後は過去の契約書やナレッジをもとに審査基準をまとめた「プレイブック」を整備し、営業部門の担当者が一次審査を行う体制を目指す。新たな法務担当者が入社した際には、受付フォームごとの担当設定を使って難易度の低い秘密保持契約から任せるなど、段階的な育成にも活用する考えだ。