LINEヤフーは、カスタマーサポートの高度化と効率化を目的に、セールスフォース・ジャパンの自律型AIエージェント「Agentforce」を採用した。9月4日、セールスフォース・ジャパンが発表した。月間30万件を超える問い合わせへのAI対応を可能にし、顧客体験の向上と運用効率の改善を目指す。
LINEヤフーは、デイリーユニークブラウザー数が1億1000万に達するYahoo! JAPANの多岐にわたるサービスにおいて、国内最大級のカスタマーサポートを提供している。3年前からはセールスフォースのAIを活用し、ケース分類や振り分けの自動化を進めてきた。2024年には生成AIによるメールの自動返信を本格稼働させ、月間約9000件の問い合わせのうち8割以上を初回で解決できる仕組みを構築している。
一方で、ヘルプページの一部で運用していた従来のチャットボットは、定型的な応答に限定され、多種多様な問い合わせへの対応や初回解決率、顧客満足度、運用コストに課題を抱えていた。そこで、より低コストで自律的なAI活用を目指し、Agentforceの導入前検証(PoC)を実施。その結果、月間30万件超の問い合わせに対応でき、問題解決率と運用効率の向上が見込めることを確認し、本格導入を決めた。
Agentforceの採用にあたり、顧客データのプライバシーとセキュリティを保護する「Einstein Trust Layer」の堅牢な機能とガバナンスが決め手となった。ゼロリテンションやデータマスキングなど、自社開発では膨大なコストと時間を要する高度なセキュリティ機能が高く評価された。さらに、柔軟なコスト設計が可能な従量課金モデル「Flex Credits」や、AI活用計画から本番導入までを一貫して支援するセールスフォースのプロフェッショナルサービスも採用の決め手になった。
Agentforceの導入で、これまでチャネルやツールごとに分散していたナレッジをセールスフォースのプラットフォームで統合的に管理できるようになり、運用負荷の軽減と対応精度の向上が期待できる。チャットボットの会話シナリオ設計やメンテナンス工数も最小限に抑えられ、オペレーターはより付加価値の高い業務に集中できる体制が整う。
LINEヤフー執行役員CIOの服部典弘氏は、「AI時代の顧客体験を見据え、デジタル労働力の活用によって社員が付加価値の高い業務に専念できる環境を目指している。Agentforceの採用は、その実現に向けたものだ」と述べる。また、セールスフォースのプロフェッショナルサービスによる技術支援とプロジェクト管理体制により、構想段階から実装、運用まで円滑に進めることができたと評価した。
今後は、この統合基盤を活用し、より高度な問い合わせ対応や音声サポート、24時間365日対応のサービス体制の構築など、カスタマーサポートのさらなる充実を図っていく方針だ。