京セラ、データ人材育成に「MotionBoard」活用 過剰在庫60%削減や調合業務標準化

2025年12月17日13:12|ニュースCaseHUB.News編集部
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 京セラは、製造現場の技術者を対象としたデータエンジニア育成教育において、ウイングアーク1stのデータ活用プラットフォーム「MotionBoard」を採用した。12月17日、ウイングアーク1stが発表した。IT初心者を含む現場社員をデータ活用人材として育成することで、過剰在庫の60%削減や部材廃棄量の大幅削減など、製造現場が抱える具体的な課題を解決している。

 京セラは、IoTセンサーなどを活用したスマートファクトリー化を推進しているが、収集・蓄積した膨大なデータを業務に生かせる人材が不足していることが課題だった。製造現場にはプログラミングなどのスキルを持つ人材が少なく、データ活用はExcelによる手作業が中心となっていた。そのため、部材管理や原料調合などの業務が属人化し、経験と勘に依存した運用から脱却できずにいた。

 そこで同社は、IT部門に依存せず、現場の技術者が自らデータを活用して課題解決できる体制を構築するため、独自の実践型伴走教育を開始。その教育プログラムの中核となるデータ活用基盤として、直感的な操作性と実用性の高さを評価し、MotionBoardを採用した。

 この教育プログラムでは、単なる知識習得ではなく「現場の課題解決」をゴールに設定している。受講者は散在するデータの加工・整理からデータベースへの格納、そしてMotionBoardを用いた可視化までの一連のプロセスを習得する。3カ月後の最終報告会で成果を発表する仕組みで、IT初心者でも講師のサポートを受けながら短期間で成果を出せる体制を整えた。

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データエンジニア教育の概要と範囲

 MotionBoardを活用した教育の効果は、具体的な数値として表れている。2021年4月の開始以来、200人を超えるデータ活用人材を輩出。ある部材管理の事例では、MotionBoardで在庫照会と発注履歴を確認できる画面を開発し、ロット情報の可視化による先入れ先出しの徹底や過剰発注の防止につなげた。これにより、過剰在庫を60%削減したほか、部材廃棄量の94.6%削減、業務に関わる作業負荷の75%削減を達成した。

 また、切削工具の製造工程における素材調合業務の標準化にも成果が出ている。従来はExcelでの手作業が中心で、担当者は関数などの知識も乏しかったが、教育を通じて原料投入から最終検査までのデータを管理するシステムを自ら開発した。調合内容と製品特性の関係を可視化し、属人的な判断を標準化したことで、トラブルの早期発見が可能になった。さらに、蓄積した知見を基に機械学習による条件最適化モデルを構築するなど、高度なデータ活用へと発展している。

 京セラデジタルビジネス推進本部デジタル人材育成部デジタル教育戦略課の三木伸一氏は、「従来の教育はスキル習得が目的になりがちで、学んだことを現場でどう生かすかが課題だった。私たちの教育では目的を『現場の課題解決』そのものに設定した」としている。また、受講者が作成した成功事例はMotionBoard上の「卒業生ボード」で社内公開されており、組織全体でのナレッジ共有も進んでいる。今後は年間100人規模が参加できる体制を整備し、スマートファクトリーの進化を加速させる方針だ。

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