LIXILは、全データのクラウド移行とセキュリティ強化を目的に「Google Workspace」を採用した。12月9日、Google Cloudが発表した。グローバル約5万人の従業員が利用するコミュニケーション基盤を刷新し、端末の紛失やサイバー攻撃のリスクを低減する。あわせて生成AI「Gemini」などの活用も進め、業務プロセスの効率化を図る。
LIXILは「Digital Workplace 2.0(DWP2.0)」プロジェクトを推進しており、すべてのデータをクラウドへ移行することを目指している。同社は以前から在宅勤務を推奨していたが、従来の環境では業務データを個人のPCに保存できたため、端末の紛失時の情報漏えいやランサムウェアなどのリスクが高い状態だった。そこで、データをクラウド環境に集約し、セキュリティ対策を強化するためにGoogle Workspaceの導入を決めた。
採用にあたっては、セキュアなクラウド環境下で機能を一元管理できる点や、場所を問わず業務を行える点が評価された。また、社内で既に活用していたデータウェアハウス「BigQuery」など、Google Cloud製品との親和性が高く、相乗効果が期待できる点も決め手となった。
導入プロジェクトは2021年11月に開始し、2024年9月に旧グループウェアを完全停止するまで約3年を要した。グローバルで5万ID規模の大規模な移行となるため、従業員の「納得感」を重視した。各部門に「推進者」を配置してきめ細かなコミュニケーションを行うとともに、CoE(Center of Excellence)から推進者を通じて現場へノウハウを伝達する体制を整えた。移行作業においては、生成AIを活用して表計算ソフトのマクロを解析し、Google Workspaceのスクリプト言語への書き換えを支援するなどして効率化を図った。
Google Workspaceへの移行により、データの保管場所はほぼ100%クラウド環境へ移り、セキュリティが担保された。不審メールの報告数が導入前と比べて半減するなど、具体的な効果も表れている。また、BigQueryやノーコード開発ツール「AppSheet」と連携させることで、従来は数日かかっていた集計作業が数秒で完了するなど、生産性も向上した。移行に伴うツールの見直しにより、旧環境にあった約6万5000個のツールのうち約1割を廃止し、半数は移行不要と判断するなど、IT資産の整理も実現した。
現在は生成AIの活用も加速させている。2025年7月に国内従業員向けにGeminiの利用申請を開始したところ、1カ月で1万2000人を超える申し込みがあった。アイデア出しやリサーチにGeminiを活用するほか、AIリサーチノート「NotebookLM」を社内FAQや情報共有に利用する動きも広がっている。
同社Digital部門System Infrastructure部リーダーの青木涼氏は、「GeminiとNotebookLMはこれからの全従業員の業務に欠かせないツールになると確信している。日常業務でのAI活用を定着させ、中長期的には高度な業務プロセスの自動化に適用することで、全社的な業務改革を実践していきたい」と話している。