富士通は、Salesforceのマーケティングプラットフォーム「Marketing Cloud Next」を「富士通Salesforceサポートデスク」に導入した。9月17日、セールスフォース・ジャパンが発表した。顧客データ活用の高度化と顧客体験の向上を目的に、AIエージェントの活用をマーケティング領域に拡大した。よりパーソナライズされた情報提供と業務効率化を両立させ、付加価値の高い業務に注力できる体制を整える。
富士通はこれまで、SalesforceのAIエージェントプラットフォーム「Agentforce」を活用し、サポートデスク業務の効率化を進めてきた。2025年1月にはAgentforceを導入し、パイロット検証ではチャットBotと比較して平均応答時間を71.5%削減するなどの成果を上げていた。この成功を受け、同年7月にはお客様総合センターの電話回線を廃止し、Agentforceをその受け皿の一つとして本格稼働させている。
一方で、顧客へのプロアクティブな情報提供や、新製品・新機能の説明といった領域では、顧客ごとに最適化されたパーソナライズ対応の強化が求められていた。しかし、従来のシステムではCRMのデータに限定され、契約情報やアンケート結果など周辺システムの顧客データを十分に活用できていなかった。また、パーソナライズ対応に不可欠なコンテンツ作成やキャンペーンレビュー作業が、限られた人的リソースでは十分に対応できないことも課題だった。
これらの課題を解決するため、富士通はMarketing Cloud Nextの導入を決めた。同製品は、Data Cloudとの連携により、CRM以外のデータも含む周辺システムの顧客データを統合できる点を評価した。これにより、顧客の利用状況に基づいた、より高度なパーソナライズメール配信が可能になる。
また、AIによる業務効率化も採用の決め手になった。Agentforce for MarketingやEinstein for Marketingを活用し、キャンペーンやコンテンツの自動生成、配信頻度・送信時間の最適化を実現。Tableau Nextで成果を可視化することで、効率と効果の両立を目指す。さらに、Agentforce for ServiceとAgentforce for MarketingのAIエージェントが連携し、契約更新から契約手続きまで自律的に対応できる仕組みを構築する。
Marketing Cloud Nextの導入により、富士通は大幅な業務効率化と顧客体験の質的向上が見込まれる。AIによる自動化によって、これまで多くの工数を要していたセグメント作成は瞬時に完了し、コンテンツ修正やレビューにかかる平均作業時間も83%削減される。これにより、担当者は日常的な定型業務から解放され、より付加価値の高い業務へ注力できる体制が整う。
富士通のクラウド&ビジネスアプリケーション事業本部本部長である桐生 卓氏は、「エージェンティックマーケティングによって顧客一人ひとりにパーソナライズされた情報提供を実現したその先には、富士通が提供するさまざまなAIエージェントを連携させ、マルチAIエージェントにより課題解決を図る。これらの自社実践で得られた知見を活かし、ビジネスパートナーとしてお客様の企業変革に貢献していきたい」と述べている。
さらに富士通は、これまでマニュアルで行っていたライセンスや契約の管理業務を、Revenue Cloudによって一括管理し、2026年4月までに完全に廃止する計画だ。契約から請求、収益管理までを自動化・一元化することで、透明性と効率性を高める。