M&Aキャピタルパートナーズは、M&Aのマッチング精度と効率を向上させ事業成長を加速させるため、統合データ活用基盤「Data 360」を採用した。Data 360の提供元であるセールスフォース・ジャパンが、10月24日に発表した。同社はすでにData 360と既存のCRMデータを活用し、導入からわずか5カ月で年間目標である「トップ面談創出数」の96.6%を達成するなど、具体的な成果を得ている。将来的には、AIエージェントのプラットフォーム「Agentforce」を活用するための基盤としても、これを利用する計画だ。
M&Aキャピタルパートナーズは2005年創業のM&Aアドバイザリー業務を手がける企業で、成約件数や売上高は右肩上がりに上昇している。しかし、活況なM&A市場において、従来のマッチング手法がアドバイザーの知識や経験、人脈に依存することが課題となっていた。アドバイザー個人のネットワークを中心に買い手候補を探索していたため、人手による探索ではアプローチしにくい層が存在し、売上機会の損失やマッチング期間の長期化につながる懸念があった。
この課題を解決し、M&Aマッチングの機会をさらに創出するため、アドバイザーの能力や知見に依存せず、候補先の網羅性と面談到達率の再現性を向上させる新たな仕組みが必要だと判断した。
Data 360の選定にあたっては、M&Aマッチング業務の革新と、将来的なビジネスを見据えた統合データ活用基盤の構築が重視された。特に、Data 360で統合したマッチングデータをビジネスユーザー自身がSalesforce CRM上で活用し、迅速なアクションにつなげられる点が決め手となった。
同社はData 360のベクトルデータベースに、取引先データや外部データなどの構造化データと、企業担当者がヒアリングしたM&Aニーズ情報などの非構造化データを統合した。これにより、企業のマッチング精度が大幅に向上し、アドバイザーはデータに基づいた網羅的かつ高精度な候補選定が可能となった。また、同社が保有する多様なマッチングデータがCRM環境に組み込まれ、一元的に活用できるようになった。これは、将来的にAgentforceを活用していくための強固な基盤となっている。
Data 360のRAG機能を活用することで、経営者同士が顔を合わせるトップ面談数の創出というKPIにおいて、2025年4月の導入以降、AIによって提案された買い手候補先がトップ面談に進んだ比率は約22%を占めている。新たに自動登録された買い手候補先が実際にトップ面談に進んだ実績も確認されており、トップ面談につながりうる買い手を提示できる価値が実証された。
今後はData 360の活用をさらに拡大し、買い手・売り手に類似する企業や、類似する買収ニーズを検索する機能の実装も実現していく。さらにAgentforceの本格活用も計画しており、将来的にはウェブサイトにAIエージェントを設置し、買い手候補の企業の質問に対し、適切な案件を自動回答したり、アドバイザーに引き継ぐアクションを実装したりすることも構想している。社内向けAIエージェントの利用も検討し、顧客体験の向上と社内業務の効率化という両面でのイノベーションを目指す。
M&Aキャピタルパートナーズの営業企画部IT推進課課長を務める栁瀬開氏は、Data 360の導入によりM&Aアドバイザリー業務に大きな変革がもたらされたと語る。課題であった一部案件のマッチング長期化の解決とさらなる効率性向上のため、AIによる高精度なマッチングを実現し、アドバイザーがコア業務に集中できるようになった。今後は、さらに高度なマッチング機能の実装やAgentforceの活用も視野に入れ、「自律型AIにより顧客体験と社内業務の効率化を両立させ、人とAIエージェントが協働するM&A業界の未来を創造していく」とコメントしている。