アメリカ航空宇宙局(NASA)は、有人月面探査計画「アルテミス」において、宇宙服の解析と月面通信システムの開発を推進するため、シノプシスのデジタルエンジニアリング・ソリューションを採用した。4月14日、シリコンからシステムまでの設計ソリューションを提供するシノプシスが発表した。仮想環境でのシミュレーションを通じて、過酷な月面環境におけるリスク低減とイノベーションの加速を目指す。
月面探査では、月の砂(レゴリス)による摩擦帯電や宇宙プラズマ環境に伴う静電放電(ESD)が、宇宙飛行士の生命維持や通信に不可欠な電子機器に悪影響を及ぼすリスクがある。また、複雑な地形における通信ネットワークの信頼性確保も大きな課題となっていた。こうした課題に対し、NASAはハードウェア構築前に仮想環境で設計をテスト・改良できるデジタルツイン技術の活用を決めた。
宇宙服の検証において、NASAジョンソン宇宙センターはシノプシスおよびElectro Magnetic Applications(EMA)を選定した。物理ベースの解析ソフトウェア「Ansys Charge Plus」を用い、多層構造の宇宙服が受ける帯電レベルを3次元で解析する。これにより、最も厳しい帯電条件の特定や材料構成の評価が可能になり、飛行士の安全確保に直結する検証作業を効率化できる。
通信システムの開発では、NASAグレン研究センターがシノプシスおよびCesiumと連携している。実在の月面地形を再現したデジタルツイン上で、無線信号の伝搬性能を可視化・検証する。クレーターなどの地形による通信遮断領域(シャドーゾーン)を事前に特定することで、宇宙飛行士やローバーが回避すべきエリアを明らかにし、より安全なミッション計画の策定を支援する。