NECが挑むAX戦略 Snowflake Intelligenceが変える経営意思決定

2026年4月14日22:39|ニュース谷川 耕一
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 日本電気(NEC)が、生成AIを全社的な意思決定や業務プロセスに深く組み込む「AIネイティブカンパニー」への変革を加速させている。同社が目指す「AIネイティブカンパニー」とは、AIを単なる分析ツールではなく、社員一人ひとりが業務判断に自然に使う状態を指す。

 Snowflakeが開催した4月14日の記者説明会では、NEC AIプラットフォーム統括部 シニアディレクターの関 徳昭氏が登壇し、これまでのDX(デジタルトランスフォーメーション)の成果と、この4月から本格始動した「AX(AIトランスフォーメーション)」の戦略、施策について説明した。AX戦略の中で、データとの対話を実現し、得られた知見を迅速に次なるアクションへと結び付けているのが、「Snowflake Intelligence」だ。グローバル10万人規模の企業が挑むAI実装の最前線を追う。

DXからAXへ、NECが目指す「AIネイティブカンパニー」

 NECは中期経営計画に基づき、直近の5年間はDXの取り組みを推進してきた。この過程で同社が徹底したのが、自社製品やソリューションを自ら積極的に取り入れて活用する「クライアントゼロ」の姿勢だ。「変わり続けることを文化へ」というスローガンのもと、プロセスとデータの標準化を実施し、DXで得られた知見を顧客の変革の支援へと還元してきた。

 2026年4月からは、新たな中期経営計画が始まっており、その中核にあるのがAXだ。発表会の冒頭、Snowflake 社長執行役員 浮田竜路氏が「データ戦略なくしてAI戦略なし」「データを探す経営から、データに問いかける経営へ」と語ったように、AIを単なるツールとして使うのではなく、質の高いデータ基盤と組み合わせてAIを使いこなすのが当たり前となる組織へ、進化することを目指している。

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Snowflake 社長執行役員 浮田竜路氏

Snowflakeを中核としたOne NEC Dataプラットフォーム

 NECではこれまで注力してきたDX推進の中で、変革を支えるデータ基盤として「One NEC Dataプラットフォーム」を構築した。そのデータ基盤の中核に据えられたのが、データプラットフォームのSnowflakeだ。5年前から同製品が採用されており、国内外の拠点に散在するデータを一元管理し、安全に「貯める・つなげる・集める・活用する」サイクルを実現している。

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One NEC Dataプラットフォーム

 DXの取り組みでは、データ基盤上に多くのダッシュボードを構築し活用してきた。その中で特に大きな成果を上げているのが「経営コックピット」と「セキュリティダッシュボード」だ。関氏によれば、経営情報の可視化により、プライスマネジメントにおいてGP率(粗利率)が5%向上するなどの具体的な成果を上げているという。

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NEC コーポレートIT・AIイノベーション部門 AIプラットフォーム統括部 シニアディレクター 関 徳昭氏

全従業員10万人が活用するAI基盤「NGS」と「cotomi」

 次のステップとなるAXのフェーズにおいて、NECは社内にAIを浸透させるための環境として、「NGS(NEC Generative AI Service)」を構築した。これは既に、グローバル10万人の従業員のうち、国内の全ユーザーが日常的に利用できる環境となっている。

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NEC Generative AI Service

 NGSでは、同社の自社製LLM「cotomi」を筆頭に、用途に応じて他社のLLMを柔軟に選択して利用できるマルチモデル構成を採用している。ここには専門知識を持つ多数の「AIエージェント」が集約されており、導入初期には社長からの「1年間は効果を問わずに使い倒せ」という号令のもと、現場と一体となって精度向上を繰り返し、現在では業務を高度に支援するレベルに達しているという。

Snowflake Intelligenceと独自技術が実現する「対話する経営」

 今回の発表では、新たに経営コックピットに「Snowflake Intelligence」を組み合わせたことが報告された。従来のダッシュボードは必要なデータをグラフ化して「見る」ためのものだったが、Snowflake Intelligenceの活用により直接データに自然言語で問いかけ、背景やインサイトをAIから引き出せるようになったのだ。

 さらに関氏は、Snowflake Intelligenceをそのまま利用するだけでなく、NEC独自の「図表文脈理解技術」や専門性を持つ「Knowledge AI」、用語の揺れを吸収する「セマンティックレイヤ」と連携させて機能拡張している点を強調した。これにより、社内にある30PBを超える非構造データ(図表を含む文書など)に対しても深い意味理解が可能になる。

未来への展望:セマンティックレイヤとAIネイティブ化
 今後の展開について、関氏は「データの意味をAIが真に理解すること」の重要性を指摘した。そのためにNECでは、データ間の意味的なつながりを定義する「セマンティック・オントロジー」の強化を進めている。これはAIがより正確な判断を下せるようにするための"知識の地図"であり、今後はこれを基盤に自然言語でのデータ検索や洞察抽出をさらに進化させる。

 また、技術的な基盤整備と並行して、「AIを活用する人」をAIネイティブ化するためのカルチャー変革にも取り組む。現場に深く入り込み、データからオントロジーを構築しAIエージェント化を推進するエンジニア「AI FDE(Forward Deployed Engineer)」の構想など、NECでは人の働き方そのものを再定義する挑戦が続くこととなる。