スーパーマーケットチェーンなどを展開するオーケーは、New Relicのオブザーバビリティプラットフォーム「New Relic」を採用し、運用を開始した。5月30日、New Relicが発表した。同社は事業と店舗業務を支える全てのシステムのクラウド化を進めており、クラウド上に展開した全システムをNew Relicで観測し、異常の検知や原因特定のスピード向上、運用の効率化や標準化を図るとしている。
オーケーは首都圏1都3県で店舗を展開し、近く関西エリアへの出店も予定している。23年3月期の売上高は5500億円を超えた。成長を支える各種の業務システムや基幹システムについては、「現場の業務を止めないこと」を重視して運用しているというが、各システムの開発パートナーやプロバイダーが異なっているため、システム運用の業務負担が大きいという課題があった。
その解決策として、同社は全システムの基盤をクラウドへと移行させる方針を打ち出した。クラウド化の第一弾として開発したのが、21年10月に会員サービスとして開始したネットスーパーのシステムで、良質なユーザー体験を提供するためのソリューションとしてNew Relicを採用した。サーバーの状態だけではなく、アプリケーションの性能やユーザー体験などを包括的に把握し、異常をリアルタイムに対処する狙いがあったという。
ネットスーパーのシステムに続き、22年10月には会員カードをモバイルアプリ化。並行して更改のタイミングを迎えた基幹システムや業務システムも順次クラウドへと移行した。これらのクラウド上で稼働させるシステムについては、全てNew Relicによる観測対象にしている。
ネットスーパーのシステムは、リリース当初、ページ遷移や決済処理の性能に課題があったが、New Relicを使った観測により、問題の原因がソフトウェア設計上のミスにあることがすぐに分かり、迅速に対処できたという。また、観測結果に基づくシステム改修により、決済時のページ遷移にかかる時間も半分以下に短縮でき、顧客満足度の向上につながっているとしている。
また同社は、基幹システムのクラウド移行にあたって、サーバーレス環境でデータ連携基盤「DataHub」を新たに開発し、クラウド上のシステムを全てDataHubにつなげる構成にした。DataHubは多様なシステムが並存する複雑な仕組みをデータレイヤとサブシステムに分離してシンプル化し、保守性を向上させる役割を担っている。これもNew Relicを使った観測の対象とすることで、安定稼働とパフォーマンスの維持を実現しているという。
オーケー IT本部副本部長兼DX推進部部長の荒川健児氏は「これまでは異なるツールを使って社内システムを監視していたため、アラートもバラバラに上がってくる状態だった。そのため、各アラートに対しての対応履歴を一元管理・可視化したり、障害対応のプロセスを標準化したりすることが困難だったが、現在はほぼ全てのシステムの観測がNew Relicで実現されつつある」とコメントしている。今後は同社の全システムをクラウドに移行し、New Relicで一元的に観測するとともに、障害対応プロセスの可視化や標準化も図る計画だ。