戸田市は、住民情報系システムと行政事務系システムの基盤を統合した。システム基盤として、Nutanixの「Nutanix Cloud Platform」(NCP)を採用した。10月10日、Nutanixが発表した。これにより、アプリケーションの安定性と可用性を向上させ、業務効率の向上と市民サービスを停止させない継続性を実現した。特に、従来システムからの移行作業をわずか4時間程度で完了させ、日常業務に負担をかけることなく安全に新基盤での稼働を開始できた。
戸田市が本格的なITインフラ基盤の整備に乗り出したのは2017年で、当時は業務主管課がそれぞれ独自に基盤とアプリケーションを導入、運用していた。効率的なITインフラの実現を目指して統合基盤への集約を目指したが、住民情報系システムと職員利用の閉域網LGWANが物理的に分割されており、理想的な統合は実現できていなかった。そうした中、全業務課への調査でシステムの停止に対する不安を訴える声が増加したため、次期基盤の最優先事項を「ノンストップで安定したシステム運用が可能な基盤構築」とし、システムトラブルや災害を想定した事業継続性の強化を目指した。また、データ容量の増大に伴うバックアップ時間の長期化も課題で、住民情報システムの稼働トラブルなど運用に支障をきたしていたため、バックアップ時間の短縮も急務だった。
戸田市は、より安定的に運用可能なクラウド基盤を検討した結果、住民情報系システムと行政事務系システムをNutanix Cloud Platform上で運用することを決定した。基盤構築作業は2024年7月に着手し、2025年1月〜3月に移行を開始した。移行と同時に、従来からの課題であった住民情報系システムと行政事務系システムの統合を図り、リソースの効率的な利用を目指した。自治体特有の三層分離構成については、論理分割によって実現している。
システム構築にあたっては、Nutanixやその他の仮想環境の構成情報やパフォーマンスデータを収集・分析するNutanix Collectorによって旧基盤の利用状況を調査した上で最適な構成を構築し、コスト最適化を実現した。また、従来不十分だったCPUやメモリー、ストレージなどリソース別の監視体制を、基盤統合と同時に充実させた。
バックアップは、Nutanixの標準機能を活かしてシンプルなBCP(事業継続計画)環境を実現した。具体的には、1次バックアップ先として仮想マシンが稼働できるBCP環境を構築した。また、従来磁気テープのLTOを利用していた2次バックアップ先を政府系のガバメントクラウドへ移行させた。このようなハイブリッド構成により、安定したBCP環境から政府クラウド上でのデータ保管までを実現している。
NCPへの移行による最も顕著な効果の一つが、基盤移行時のダウンタイムの大幅な短縮だ。業務終了(定時)から業務システムの停止と更新、その後の業務担当者の動作確認を含めても、4時間もかからずに新基盤での稼働が可能になった。このダウンタイムの短さが業務主管課の負担を軽くし、スムーズな移行を実現した。また、業務システムの処理性能も向上し、業務担当者から「夜間処理時間がほぼ半分になった」との声が寄せられている。課題だったバックアップにかかる時間は数分にまで短時間化され、バックアップ自体の失敗も生じない。市の行政全体から見て、安定して市民サービスを提供できる安心安全なインフラ環境を導入でき、コスト削減効果も確認できた。
戸田市企画財政部デジタル戦略室課長の島田敬生氏は、システムの停止に対する不安が増加したことを受け、より安定的に運用可能なクラウド基盤を検討した結果、NCP上で運用することになったと説明する。さらに、「移行後は大きなトラブルもなく、システムの安定性と可用性が向上した」とし、データ量の増加にもかかわらず、バックアップに必要な時間を短縮でき、従来基盤と比べてコスト削減効果も確認できたため、安心して基盤を活用できていると述べている。また、「Nutanix Cloud Platformに移行して、トラブルは起こっていない」とし、安全に移行できた上に機能的にもアップグレードされたと感じている。
戸田市は、すでに統合した住民情報系システムと行政事務系システムに加えて、2025年中にインターネット接続系システムをNCP上に統合する計画だ。今後は、基幹系でガバメントクラウドの標準化対応を進めるとともに、パブリッククラウドを利用するハイブリッドマルチクラウド運用や、住民サービス向けの生成AIチャットボットの活用などに対応できるインフラ構築を目指す方針だ。