伊藤園は、「Oracle Cloud Infrastructure(OCI)」の「Oracle Autonomous Data Warehouse」と「Oracle Analytics Cloud」を導入し、約5500人の従業員が利用する営業系データ活用基盤を刷新した。5月30日、サービス提供元の日本オラクルが発表した。
伊藤園グループは2023年4月期からの中長期経営計画で「DXの強化推進」を掲げ、戦略的なIT投資を進めている。同社は2000年代後半にERPの「Oracle E-Business Suite」を導入し、生産管理、販売管理、財務会計システムを統合。データを一元管理しながら全社員によるデータ利用を可能にするデータ活用基盤「見れる君」を整備した。「見れる君」は、定型レポートや汎用検索機能などを備え、現在は営業部門を中心に約5500人が利用している。しかし、利用開始から長年経過し、アップデートが課題になっていたという。
同社はまず、データベース・インフラストラクチャの刷新に着手した。2019年に従来のオンプレミス環境からクラウド環境への移行を決定。自律型の運用支援機能やコストメリットを評価し、Autonomous Data Warehouseを選定した。
データベース・インフラストラクチャの刷新後、負荷が高まる時間帯のパフォーマンスは安定しているという。従来は朝までに終了しないこともあった夜間バッチの処理時間も半減され、利用者のアクセスがピークとなる朝には最新のデータを確実に利用できるようになった。また、クラウドサービスの導入によって、情報システム部門の運用負荷が軽減され、インフラの更改からも解放された。さらに、オートスケーリング機能により、営業社員1日の利用状況に合わせた最適なリソース設定を自動的に無停止で実現でき、ピーク時に合わせた余剰リソースの維持が不要になった。その結果、コストの最適化にもつながり、従来のインフラと比べて構築と運用の全体コストを圧縮できたとしている。
直近では、見れる君の汎用検索として利用していたツールのサポート終了に伴い、データ活用の高度化を見据えた新たなインターフェースとしてAnalytics Cloudを導入した。AIや機械学習などを使った最新のアナリティクス機能を実装していることが選定のポイントになったという。
Analytics Cloudを活用した新たな汎用検索インターフェースは23年12月に全機能をリリース。従来システムとの並行稼働を経て、24年6月に新システムに完全移行した。商品別や顧客別の実績データなどをリアルタイムで分析し、しきい値を超えた場合は担当者に自動でアラートを出すなど、従業員のデータ活用の効率を高め、営業活動の生産性向上を目指す。
今回のデータ活用基盤刷新プロジェクトは、日本オラクルのコンサルティング部門の支援の下、伊藤忠テクノソリューションズがOracle製品の導入と旧環境からの移行を担当した。
伊藤園グループ経営推進部部長の青柳敏夫氏は「Autonomous Data Warehouseを採用したことで、情報システム部門がインフラを更改する必要がなくなり、そのリソースを業務改善やビジネス成長に活用できる。Oracle Analytics Cloudは汎用検索や定型レポートのインターフェースとしても活用しており、高度なデータ活用の拡大につながると期待している」とコメントしている。同社は今後、Autonomous Data WarehouseとAnalytics CloudのAIやML技術を活用し、データドリブンな戦略策定や業務改善にも取り組んでいく方針だという。