東京都立広尾病院、PHR活用で自宅療養を可視化 早期の社会復帰を支援

2026年4月8日09:00|ニュースCaseHUB.News編集部
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 東京都立広尾病院は、生活者の健康・医療情報を共有できるPHR(Personal Health Record)基盤サービス「ヘルスケアパスポート」を採用した。4月7日、同システムを開発・提供するTISと共同導入を担う東和薬品が発表した。診察データだけでは把握しにくい自宅療養中の体調変化を可視化し、適切な診断や早期の社会復帰につなげている。

 広尾病院は救急医療や災害医療、島しょ医療で重要な役割を担う都の基幹病院だ。その中で病院総合診療科は、特定の臓器に限定せず幅広く診療を行い、患者の治療過程に寄り添う「伴走型医療」を掲げている。近年、高齢者が複数の医療機関を受診することで、自宅での過ごし方や体調変化の情報が分断され、患者の全体像が見えにくくなっていることが課題だった。こうした背景から、患者自身が情報のオーナーシップを持ち主体的に治療へ参加する手段として、個人の健康・医療・介護に関する情報を安全に集約・保存し、必要な相手やサービスと連携・利活用できるようにするための情報システム基盤であるPHRに着目した。

 ヘルスケアパスポートの採用にあたり、クラウド上で患者の経過を記録・共有できるプラットフォーム型である点や、医療機関が導入しやすい料金設定、現場の要望に応じて入力メニューを柔軟にカスタマイズできる点を評価した。

 2024年夏より病院総合診療科で導入を開始。患者は血圧、脈拍、体温などのバイタルデータのほか、痛みの度合いや倦怠感をアプリに登録する。医師らはブラウザの管理画面を通じてこれらの情報をリアルタイムで共有し、きめ細かな薬の処方やアドバイスに活用している。

 導入効果として、慢性疼痛疾患や若年層に多い起立性調節障害(POTS)などの事例で、適切な診断と処方が可能になった。自宅療養の継続により、学校への通学再開や仕事の継続といった社会復帰の成果につながっている。また、事前に患者の状態を把握できることで外来診療が効率化され、AI問診などの他ツールとの併用により、医師の診療時間を1日あたり約1時間短縮できている。

 東京都立広尾病院 病院総合診療科 部長の小坂鎮太郎氏は、「日々のモニタリングで状態を確認することで、通院回数の減少や、不安による救急受診の抑制にもつながっている。受診行動の適正化は患者個人の負担減だけでなく、不要な検査や救急搬送を減らし、医療費の適正化にも寄与する」と話している。

 今後は、院内の他の診療科への展開に加え、地域のかかりつけ医と情報を共有する「二人主治医制」などの地域医療連携にもヘルスケアパスポートを活用していく考えだ。

ニュースリリース