小田急電鉄、ローコード開発で業務効率化とコスト削減を実現

2024年11月14日23:08|ニュースCaseHUB.News編集部
x
hatebu

 小田急電鉄はローコード開発プラットフォーム「Claris FileMaker」を導入し、運転士や整備士など現場の担当者が自ら業務アプリケーションを開発、DXを推進している。11月13日、Claris Internationalが発表した。

 これまで小田急電鉄では、業務システム開発を外部ベンダーに委託していた。しかし、鉄道事業の現場に精通していない外部ベンダーとの開発には、綿密な要件定義や開発期間、改修の度にかかる時間と追加コストなどが課題となっていた。そこで、コストを抑えつつ現場に必要なシステムを社内で構築できる、ノーコード・ローコード開発による内製化ツールの検討を開始した。

 さまざまな部署で異なるノーコード・ローコード製品を導入した場合に起こりうる、データ統合の複雑化と非効率化を懸念し、数ある製品の中から開発自由度と汎用性が高く、リリース後も機能改善や修正、アジャイルな新機能追加が可能なClaris FileMakerを、鉄道部門の統一ツールとして採用した。

 2022年度から内製開発を開始し、FileMaker導入から2年間で10以上のシステムを稼働させている。リリース後も現場ユーザーのフィードバックを反映しながら機能改善を続け、システムの価値向上を図っている。DXに対する社内風土の変化に加え、コスト面や業務効率性の面でもFileMaker導入の効果が現れている。

 安全運行に関する情報を共有する「安全コミュニケーションシステム」は、開発期間18か月の大規模システムだ。既存システムのOSサポート切れを機にFileMakerで内製開発し、数千万円のシステム更新費用と年間数百万円の保守費用を削減した。運転士時代の経験を活かし、報告書をテンプレート化するなど、現場のニーズに即した機能を追加することで、乗務員の作業負荷軽減にも貢献している。

 列車番号から担当乗務員の行路情報をiPhoneやiPadで確認できる「列車運転情報確認ツール(通称:れっけん)」は、開発期間3か月で実現した。以前は表計算ソフトで管理していた行路情報を、れっけんにより場所を選ばずに確認可能となった。運行異常時など、予定外の列車を担当する場合でも容易に情報収集でき、平常時の作業効率も向上。年間合計約2700時間の削減に成功している。

20241113_odakyu1.png
紙のダイヤグラム(左)の情報を集約し iPhone での検索を実現したれっけん(右)

 他にも、特急料金を計算する「特急料金検索アプリ」(開発期間3か月)や、貸与工具を管理する「個人貸与工具台帳システム」(開発期間3か月)などを開発している。特急料金検索アプリは、外国人客にも分かりやすく料金を提示できるよう、英語表記を追加するなど、顧客サービス向上にもつなげている。個人貸与工具台帳システムは、紙台帳による管理をデジタル化し、ペーパーレス化や管理業務の効率化、運用方法の統一を実現した。

20241113_odakyu2.png
個人貸与工具台帳システムのトップ画面および個人貸与工具 本台帳

 小田急電鉄 交通企画部 DX推進プロジェクトマネジャー 遠藤直人氏は、「より使いやすいシステムを、スピード感を持って低コストで、従業員が作る。それがより良いシステム構築につながると考えています。内製化によって開発者本人だけでなく会社全体のデジタルリテラシーが向上し、社員のDXへの関心が高まっています。コストや業務効率といった数字に表れる部分だけでなく、少しずつではありますが、会社の文化に変化を与えていることが内製化の大きな成果です」と述べている。 

ニュースリリース