出光興産、原油輸送コスト最適化と安定供給を両立するシステムを導入

2025年6月9日11:22|ニュースCaseHUB.News編集部
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 出光興産は、海外からの原油輸送コストの最小化と安定供給の両立を目的に、「外航船配船計画最適化システム」を導入した。6月6日、同システムの構築を支援したエクサウィザーズが発表した。

 出光興産は、ガソリンや灯油・軽油などの石油製品を製造するために、海外から原油を輸入している。原油輸送に用いる外航船の配船計画立案は、原油処理計画やタンク在庫、原油の性質といった製油所のニーズに加え、港や船など多様な制約条件を考慮する必要がある。これまで熟練した担当者が膨大な時間をかけて配船計画を立案していたが、原油輸送コストの最適化と作業効率向上が大きな課題となっていた。

 こうした事業環境の中で、出光興産は2022年にエクサウィザーズと業務提携。出光興産が持つ豊富なデータや顧客基盤、現場知見と、エクサウィザーズのデジタル・AI技術やDX人材育成ノウハウを生かし、配船計画の高度化に取り組んできた。

 今回導入した外航船配船計画最適化システムは、出光興産の熟練者の知見を取り込み、外航船配船に特有の複雑な条件を考慮した独自アルゴリズムを実装している。港や船、製油所の制約などを同時に考慮し、運航コストを軸に定量的な意思決定が可能となるように設計されている。また、複数シナリオの比較や、最適解をベースに人による意思決定ができる機能も備えており、幅広いユースケースに対応できる。

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外航船配船計画システムの概要

 システム構築にあたっては、現場知見とAI技術を融合した実用的なシステム設計を重視した。熟練者の経験とエンジニアの技術力を融合し、配船計画の本質的な要件を再設計したという。最適化手法や組み合わせを評価・検証し、各種ユースケースに合わせたチューニングを極限まで進めたことで、実務要件と計算時間の最適化、使い勝手の良さを両立したとしている。

 出光興産は2025年4月から外航船配船のタンカーを対象に、同システムを段階的に運用している。導入前の実証試験では、配船計画立案の作業時間を最大40%削減。寄港数の削減などにより、年間で最大数億円規模の運航コスト削減を見込む。従来は熟練者の経験に頼っていた計画立案が、システムによって短時間で最適な配船計画を策定できるようになり、担当者はシステムが立案した計画を確認・微修正するだけで効率的に業務を進められる。

 今後、出光興産は外航船による原油輸送だけでなく、国内の石油製品配送を担うタンクローリーや、製油所・油槽所間の内航船による輸送業務にもデジタル技術を積極的に導入し、計画立案業務や物流の効率化によるコスト低減を推進する方針だ。今回のシステム導入により、原油輸送コストの大幅な削減と業務効率化を実現し、安定供給体制の強化につなげていく。

ニュースリリース


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