ニッセイ・ウェルス生命、基幹システムをマルチクラウド化 バッチ処理短縮、運用一元化

2025年8月20日17:28|ニュースCaseHUB.News編集部
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 ニッセイ・ウェルス生命保険は、保険契約を管理する基幹システムの基盤を「Oracle Cloud Infrastructure(OCI)」と「Microsoft Azure」を組み合わせたマルチクラウド環境へ移行した。8月20日、移行を支援したTISが発表した。今回の移行により、夜間バッチ処理の大幅な高速化や情報照会レスポンスの改善を実現。今後はクラウドネイティブなサービスを組み合わせ、さらなるシステムの機能向上を目指す。

 ニッセイ・ウェルス生命は、金融機関の窓口を通じた資産形成・資産承継に関する商品やサービスを強みとし、保有契約件数は60万件を超える。同社は2018年頃から、あらゆる業務システムの脱データセンター化を目指す「クラウドジャーニー構想」を推進しており、これまでに100以上の業務システムや仮想デスクトップ基盤をAzureへ移行してきた。

 次なる対象となった保険契約管理システムは、Oracle Databaseを組み込んだオープン系サーバー上に構築され、データセンターで運用されてきた。基幹システムのクラウド移行は同社として初の試みであり、可用性や堅牢性の確保が重要課題だった。当初、OCI以外のクラウドサービスも検討されたが、Oracle Databaseの新規ライセンス購入に伴う高額なコストが障壁となっていた。

 そこで同社は、Oracle DatabaseがPaaSとして提供され、ライセンス費用が従量課金に含まれるOCIに着目。他社クラウドと比較してコストを大幅に抑制できる点に加え、「Oracle Real Application Clusters(RAC)」や「Oracle Data Guard」をサービスとして利用できる可用性の高さを評価した。その結果、データベース基盤をOCI上に構築し、既存の業務システムが稼働するAzureと連携させるマルチクラウド構成を決定した。

 移行プロジェクトのパートナーには、TISを選定。過去にニッセイ・ウェルス生命のAzure環境の構築・運用を支援した実績があり、業務基盤を熟知している点や、AzureとOCI双方に精通しており、障害発生時も窓口が分散することなく一元的な運用管理を託せると判断した。

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提供したサービスのイメージ

 プロジェクトは2023年1月にPoC(概念実証)から着手し、OCI上のOracle Databaseの安定稼働や耐障害性を数カ月かけて検証。同年9月から要件定義・設計を開始し、約1年かけてマルチクラウド環境を構築した。情報漏洩リスクを最小化するため、AzureとOCI間はインターコネクトで、ニッセイ・ウェルス生命の拠点と両クラウド間は専用線で接続し、プライベートネットワークに近い構成を採用している。

 新システムへの移行後、マルチクラウド環境は安定稼働を続けている。旧式の物理サーバーから最新のIaaS基盤へ移行し、データベースを「Oracle Database 11g」から最新版の19cへ更新したことで、情報照会のレスポンスが改善。また、保険料計算などを行う夜間バッチ処理時間は、1日あたり平均2時間から1時間7分へ短縮された。

 ニッセイ・ウェルス生命保険IT本部ITインフラ推進部の東田歩氏と石川太郎氏は、「一元運用は当社にとって最優先の条件だった。OCIとAzureを組み合わせる前例の少ない取り組みをトータルで支援してもらえたのはTISだからこそだ。5年という期間で考えるとマルチクラウドの方がコストを抑えられると考えている。何よりも、年々旧態化していくシステムを使い続けるリスクがなくなることは大きなメリットだ。今後はクラウドネイティブなサービスを組み合わせて柔軟なシステムへと機能向上を図っていきたい」と話している。

ニュースリリース