東京女子医科大学は、学内および附属病院の決裁業務をデジタル化するため、kickflowのクラウドワークフロー「kickflow」を採用した。12月15日、kickflowが発表した。職員約6000人が利用する基盤として、紙ベースだった申請業務を刷新した。各部署が自律的に運用できる環境を整備し、意思決定の迅速化とペーパーレス化につなげる。
同大は1900年創立の医科大学で、大学や附属病院など多岐にわたる組織を抱えている。従来、稟議や申請業務の多くを紙で運用していたため、申請書の所在不明や承認の遅延といった課題が常態化していた。過去にもワークフローシステムの導入を試みたが、複雑な組織階層や承認ルートへの対応に多額のカスタマイズ費用を要することなどから、断念した経緯があった。
今回の刷新にあたっては、システムに合わせて運用を整理することを前提に、カスタマイズを行わずに導入できる製品を選定した。約10製品を比較検討し、最終的にkickflowを採用した。選定の決め手として、複雑な組織構造に対応できる柔軟な分岐設定機能、各部署に管理権限を委譲できる点、職員が直感的に操作できるユーザーインターフェース(UI)の分かりやすさを挙げている。
導入プロジェクトは2024年7月に本格始動した。全職員約6000人が利用することを想定し、まずは人事や経理など一部の部署で、利用頻度が高くシンプルな申請手続きから電子化に着手した。最初からすべての業務を移行するのではなく、段階的に利用範囲を拡大する方針をとった。また、情報システム部門がすべてを管理するのではなく、現場の部署が自ら申請フォームを作成・運用できる体制を目指した点も特徴だ。
kickflowの導入により、申請業務の停滞が解消されつつある。特に、承認プロセスにおけるコメント機能を活用することで、単なる決裁だけでなく、内容に関する質疑応答や指示が記録として残り、議論が活性化する効果も生まれている。現場の職員から「この業務も電子化したい」という要望が上がるなど、全部署へのペーパーレス化に向けた機運が高まっている。
同大情報システム課の担当者は、「ワークフローシステムの導入は単なるツール選定ではなく、組織の働き方や意思決定のあり方を見直す機会だ。現場の声を拾い上げ、ボトムアップとトップダウンを組み合わせることが定着の鍵になる」と話している。