茅ヶ崎市は、ガバメントクラウド環境におけるAWS利用料の管理・最適化を目的に、メタップスホールディングスが提供するAWSコスト管理ツール「srest」を導入した。12月18日、メタップスホールディングスが発表した。全国の自治体の多くが採用する「共同利用方式」の環境において、構造的な課題となっていた請求・検収業務の効率化とコストの可視化を推進する。
全国の自治体でガバメントクラウドへの移行が進む中、限られた財源を有効活用するためのコスト管理が重要な課題となっている。茅ヶ崎市は、複数の自治体が一つの運用管理補助者に委託する共同利用方式に加え、複数のベンダーが関わるマルチベンダー体制でクラウドを活用している。この体制下では、自治体側からAWS利用料の詳細なデータに直接アクセスできない制限があり、運用ベンダーとの煩雑なコミュニケーションや検収業務に多大な工数が発生していた。また、職員の異動やクラウド知識の差によらず、継続的にコストを管理できる基盤の整備も急務だった。
こうした背景から、茅ヶ崎市は2025年9月、NECが運用する環境においてsrestの実証実験を開始。共同利用方式での同ツール活用は全国初の試みだ。実証を通じて、自治体側でコスト構造を直接把握できる環境が整い、検収業務に必要な情報を迅速に入手できるレポート機能などの有効性が確認された。短期間で運用の効率化とコスト可視化の基盤が確立されたことを評価し、今回の正式導入に至った。
srestの導入により、従来運用ベンダーを介して行っていたコスト情報の把握がリアルタイムで可能になった。これにより、情報のタイムラグやコミュニケーションコストが大幅に削減され、事務負担が軽減された。また、詳細なコストデータに基づいた具体的な議論が可能になったことで、運用ベンダーと連携したクラウドコスト削減への取り組みを加速させる土台が整った。
茅ヶ崎市デジタル推進課の松野友貴氏は、コスト削減の必要性を感じながらも可視化の手段が不明確だったと振り返る。同氏は、「srestはクラウドの専門家ではない職員でも簡単に情報にアクセスでき、コスト最適化を検討できる土台が整う点が魅力だ。実証実験を通じて実装されたレポート機能の提供スピードも期待以上だった」と評価する。今後は、他の部署への説明責任を果たすツールとしての活用も期待しているという。
今後は、NEC以外の事業者が運用する環境にも協力を依頼し、srestによるガバメントクラウドのコスト一元管理を目指す方針だ。茅ヶ崎市は、この取り組みを通じて、先進事例として自治体特有のコスト課題の解消をさらに進めていきたい考えだ。