国際体操連盟(FIG)は、富士通と共同開発している体操競技の採点支援システム「Judging Support System(JSS)」を全10種目に導入した。2023年10月5日、富士通が発表した。9月30日からベルギーのアントワープで開催された「第52回世界体操競技選手権大会」で適用を開始した。
FIGでは、選手の競技力向上や体操器具の進化に伴い、技の複雑化、高度化が進行。競技を判定する審判の負担増加や、より高度なスキルが求められるとの課題意識があった。そこでFIGと富士通は2017年から、採点の公平性、透明性の確保といったスポーツインテグリティを高める取り組みとしてJSSの開発に着手した。2019年からは世界体操選手権大会をはじめとする世界大会で、体操の一部の種目で活用を進めてきた。
JSSは、競技者の動作をセンサーで取得し、数値データとして分析することでAIが技を自動判定する。審判は、JSSの画面上でAIによる技の自動判定結果や、関節の角度などの数値情報を確認できる。これにより審判は、体操の高速で複雑な動きを正確に把握し、同一基準による正確な判定を行えるようになる。
今回、従来のセンサー方式をカメラ映像による画像分析に置き換え、富士通が開発したAI技術を強化したことで、体操の高速で複雑な動きを精緻に捉えた分析が可能になった。これにより、すべての種目でJSSの活用が可能になった。
FIG加盟国は今後、JSSをトレーニング中に選手の能力や技の習熟度を評価するトレーニングプログラムの一環としても利用できる。また、JSSで生成されたデータに基づいた専門的な解説や映像を、世界中の視聴者に提供していく。FIGはJSSを活用し、関節の角度や手足の位置など数値を用いより具体的に技を判断するガイドラインを2023年11月より順次公開する。