芦ノ湖漁業協同組合と東日本電信電話(NTT東日本)神奈川事業部、フルノシステムズ、インターネットイニシアティブ(IIJ)は8月30日、芦ノ湖で無線通信を活用したデジタル監視システムと水温センシングシステムの実証実験を行い、有効性を確認したと発表した。
芦ノ湖漁業協同組合では、人手不足への対応策の一環として、密漁の監視や水温の計測などを遠隔で行うべく、広範囲をカバーできる無線通信の導入を検討。2024年4月19日から5月31日にかけて実証実験を行った。
湖岸に設置したカメラの映像をIEEE規格「802.11ah(Wi-Fi HaLow)」で対岸に伝送し、違法・不法操業者を監視したほか、Wi-Fi HaLowとLPWA(省電力長距離通信)「LoRaWAN」を使って水温センサーのデータを送信し、ホームページで情報を提供した。実証実験の設計や機器の設置、運用管理はNTT東日本神奈川事業部、フルノシステムズがWi-Fi HaLowの関連機器とサービス、IIJがLoRaWANの関連機器とサービスを手がけた。
実証実験の結果、船舶の往来による電波干渉があるものの、平均200~300kbpsのスループットを確保でき、動画伝送や水温データ伝送に大きな影響はなく、安定した通信環境を構築できたという。
カメラによる監視では、人物検知・モーション検知機能を活用して昼間は正常に人物を検知できたことから、事故や密漁への早期対応につなげられるとしている。一方、夜間は高感度レンズを搭載したカメラを使用し、月明かり程度の照度があればカラー撮影が可能だったが、暗所でも撮影できる赤外線モードとカラー撮影のどちらが適しているか、人物検知・モーション検知の感度をどのように設定するかなどは継続的な検討が必要であることを示唆した。
芦ノ湖漁業協同組合は今回の実証実験で「湖上での通信の有効性・活用性を認識できた」として、本格導入を検討する。