アスクルは、基幹システムを「SAP ERP(ECC 6.0)」から最新版の「SAP S/4HANA」へと刷新した。インフラ基盤にはアマゾン ウェブ サービス(AWS)を採用している。5月11日、移行パートナーを務めたBeeXが発表した。24時間365日稼働するECサイトを停止することなく、国内屈指の規模を誇る基幹システムを21時間という短時間のダウンタイムで移行完了させた。これにより、組織全体の業務最適化やDX推進のための強固な基盤を確立した。
アスクルはBtoB向け「ASKUL」やBtoC向け「LOHACO」を運営する国内最大級のeコマース企業だ。2009年の基幹システム導入から15年近く経過し、既存システムのサポート終了が迫るなか、ビジネスの根幹であるシステムの最新化を決断した。刷新にあたっては、自社の強みであるビッグデータの活用や、経済産業省の「DX銘柄」に選定されるなど積極的に推進してきたデジタルトランスフォーメーション(DX)をさらに加速させることが課題となっていた。
パートナーに選定されたBeeXは、2018年から同社のSAPシステムに携わり、環境を熟知している点や、インフラおよびBASIS領域における技術力と柔軟な対応力が評価された。
プロジェクトにおける最大の困難は、社名の由来でもある「明日届ける」という顧客との約束を守るため、ビジネスを止めることなく最小限のダウンタイムで移行を完了させることにあった。この難題に対し、同社とBeeXは移行データ量の削減を徹底。不要データの削除などにより、当初20TBを超えていたデータ量を移行直後には5TBまで圧縮した。さらに、停止点までのデータ移行を事前に行う2回の差分移行を実施したほか、本番相当の環境をAWS上に構築して5回のリハーサルを重ね、手順やパフォーマンスを綿密に検証した。
移行後は安定した運用が続いており、今後はアドオンの削減による「クリーンコア化」を推進する。具体的には、大量のアドオンを開発・拡張プラットフォーム「SAP BTP」へと移行させることで、SAP本体をクリーンな状態に維持し、最新機能を最大限に活用できる環境を整える。あわせて、蓄積された大量のデータをリアルタイムに収集・分析できる基盤の整備も進め、迅速な意思決定につなげる。
アスクル テクノロジー本部統括部長の小林悟氏は、今回の刷新によりDXのための基盤が整ったとした上で、「今後はSAP BTPを効果的に活用しつつ、業務にAIを取り入れていきたい。AIを活用することで、サービスレベルを変えることなく、半分の負荷で現状の業務が回せるようにしたい」と展望を述べている。