扶桑薬品工業は、日立ソリューションズの支援を受け、SAPのERP製品「SAP S/4HANA」による基幹業務システムの刷新を完了した。2月3日、日立ソリューションズが発表した。分断されていた複数のデータベースを1つに統合することで、医薬品の安定供給を支える基幹システムを強化。経営状況を即時に把握できるデータドリブンな基盤を整備し、さらなる業務効率化やデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進を目指す。
扶桑薬品工業は、人工腎臓用透析液の国内大手メーカー。ブドウ糖注射液の製造から始まり、現在は透析剤や輸液、注射剤など、医療現場に欠かせない基礎的医薬品の製造販売を担っている。同社は製品の安定供給を社会的使命と位置づけ、国内4カ所の製造拠点と全国12カ所の物流拠点を整備するなど、安定供給体制の維持に努めてきた。
安定供給を支える基幹業務システム(ERP)の刷新にあたり、同社は従来のシステム運用における課題を抱えていた。旧システムは業務領域ごとにスクラッチ開発されており、データベースも個別に構築されていた。そのため、システム間の連携にはインターフェースを介する必要があり、データの不整合や処理遅延のリスクが生じていた。また、一部の業務ではデータの二重入力が発生し、業務の属人化も課題となっていた。
こうした背景から、同社はERPの保守期限を機に、業務プロセスの抜本的な見直しを決定した。複数の製品を比較検討した結果、複数のデータベースを必要とする他製品に対し、1つのデータベースに情報を統合できる点を評価し、SAP S/4HANAの採用を決めた。
導入パートナーには、製薬業界への深い知見と国内トップクラスの導入実績を持つ日立ソリューションズを選定した。2023年9月にシステム構築を開始し、2025年4月に本稼働を迎えた。プロジェクトでは、パッケージの標準機能に業務を合わせる「Fit to Standard」の考え方を重視し、業務の標準化を進めた。
刷新後の新システムでは、製造、販売、財務会計の各業務間でシームレスなデータ連携が可能になった。これにより、データの不整合や遅延リスクが低減されたほか、懸案だったデータの二重入力も解消された。営業担当者が分析に用いる受注実績などの重要データも、迅速かつ正確に取得できる環境が整っている。
サプライチェーン管理についても、新システムへの集約と可視化を進める。これにより、品質管理とコンプライアンスの両立、レジリエンスの強化を図り、より確実な安定供給体制を構築する。
扶桑薬品工業の上席執行役員で総務本部長を務める古市晴彦氏は、「日立ソリューションズは私たちの要望や疑問に対して真摯に対峙してくれた。プロジェクト終盤には膝を突き合わせ、ホワイトボードに課題を挙げて1つずつ着実に解決してくれた。今後も私たちと同じチームとして、システム全般の最適化を一緒に考えてほしい」としている。
今後は、経営状況をリアルタイムで可視化するダッシュボードの作成や、製品の流通履歴を追跡するトレーサビリティの向上など、さらなる活用を計画している。将来的には、蓄積されたデータを活用したデータドリブン経営の実現や、AI活用による創薬など、DXの取り組みを加速させる。