日本ゼオンは、製造現場でのデータ利活用とスマート工場化を推進するため、IoTプラットフォームSORACOM(ソラコム)の閉域網を活用した全社共通のIoT共通基盤を構築し、運用を開始した。10月14日、ソラコムが発表した。拠点ごとに分散していたデータの安全な統合を実現し、製造拠点の業務効率化とデータ活用を加速させる。今後は効果のあった取り組みを他拠点へ横展開し、全社的なIoT利活用とスマート工場化の継続的な推進を図る。
日本ゼオンは、自動車タイヤ用の合成ゴムやスマートフォン・ディスプレイ向けの光学フィルムなどをグローバルに提供する化学メーカー。近年、製造拠点や研究室で、分析装置や製造ラインから得られるデータが増加し、これを安全かつ効率的に活用するための仕組みが求められていた。一方で、セキュリティ要件と運用負荷を考慮したシステム構築には高度な知見が必要であり、導入の時間とコストが課題だった。
こうした背景から、全社横断で高いセキュリティと柔軟な導入を両立できるIoT共通基盤の整備を検討し、今回のIoT共通基盤の構築に至った。構築にあたり、IoTに精通したソラコムのコンサルタントが伴走するSORACOMプロフェッショナルサービスを活用した。要件定義から概念実証(PoC)、本番運用に向けたネットワーク設計・展開まで支援を受けた。
共通基盤のIoT専用ネットワークには、SORACOM Air for セルラーが採用され、SORACOMの閉域網を構成した。これにより、有線LANの敷設工事を原則不要とし、任意の場所にゲートウェイを設置するだけで、外部からアクセスできない安全な通信環境を実現。これは社内からは、アクセス可能だ。
共通基盤の最初のユースケースとして、高岡工場で設備の動作監視システムにIoTを導入し、すでに稼働を開始している。高岡工場での成功を受け、複数の拠点でのPoCが進行中だ。共通基盤の導入で、拠点ごとに分散していたデータが安全に統合され、生産性向上や業務改善の加速につながることが期待される。
日本ゼオンのデジタル統括推進部門デジタルシステム管理部インフラグループの小林弘明氏は、「これまで、拠点ごとに現場の工夫でIoT活用を進めてきたが、全社的にデータを活用するには、より柔軟かつセキュアなネットワーク基盤が必要だと感じていた。今回、専門家であるソラコムの支援を受けながらIoT共通基盤を整備したことで、現場から寄せられるIoT化の要望に対し、"簡単に・速く・広く展開できる"コンセプトが現実のものになった。セキュアで運用しやすく、工場ごとにスモールスタートができる点も大きな魅力だ」とコメントしている。
今後は、効果のあった取り組みを他の拠点に横展開し、IoTの全社的な利活用をさらに拡大し、継続的にスマート工場化を進めていく方針だ 。