Stripeは、社内向けに開発したナレッジAIプラットフォーム「Kai」の運用成果を明らかにした。9月17日、日本法人のストライプジャパンが発表した。非エンジニア部門でのAI活用を進めることで、営業活動量の倍増と成約件数39%増を達成したほか、全社で年間25000時間分の業務を削減した。今後は処理能力の向上や自律的な改善機能の実装を進める。
Stripeでは、エンジニア領域でAIツールの活用が進む一方、セールスや財務、カスタマーサクセスといった非エンジニアの職種ではAI活用の恩恵を十分に享受できていなかった。商談前の顧客調査やコンプライアンス確認、売上予測といった日常業務に既存ツールをそのまま適用する場合、厳格なセキュリティ基準を維持しながら社内データベースへ安全にアクセスする手段が不足していたためだ。
同社では過去に、ノーコードのツールを用いて4000以上のAIエージェントが作成されたものの、類似したエージェントが乱立して管理や運用の負担が増大した経緯があった。また、エンジニア向けのコーディングエージェントをビジネス職が利用する動きも見られたが、サポート部門への負荷増加やセキュリティ上の懸念が浮上。全社的な知見の活用、日常の業務環境への統合、安全基準の自動適用という要件を満たす専用基盤の構築が必要となっていた。
こうした背景から同社は、2026年4月に独自のAIプラットフォームであるKaiをリリースした。同基盤はAPIを通じた共通インターフェース、各部門がノーコードでスキルを管理できる「AgentStudio」、Kubernetesを活用した実行環境という3層構造で構築されている。利用者はWebブラウザやSlack、Chrome拡張機能などを通じて日常の業務画面から直接利用できる。さらに、やり取りごとに隔離されたサンドボックス環境と仮想ファイルシステムを自動生成し、顧客データ同士の混在を防ぐガードレールを自動適用する仕組みを整えた。
Kaiの運用開始後、社内での定着は急速に進み、顧客対応部門の83%が毎週利用する基盤へと成長した。日常的な質問対応にとどまらず、最長で932ターンにおよぶ長時間の対話やデータ分析にも活用されており、全社で日々5000件以上のセッションが稼働している。新入社員の利用頻度は既存社員の2.7倍に達し、業務立ち上げの早期化にも寄与している。
営業部門では、Kaiを積極的に活用した週の活動量が未使用時と比べて2倍に拡大し、商談数が17%、成約件数が39%増加した。全社規模では年間25000時間におよぶ社内管理業務の削減につながっており、創出した時間を本来のコア業務に振り向けている。
同社は今後、Kaiが一度に処理できる情報量と仮想ファイルシステムとの連携を強化し、大容量データの処理能力を高める方針だ。実行ログを振り返って動作を自己評価する自動改善ループの構築や、複数のメンバーとAIが同一成果物上で共同作業できる環境の開発にも取り組むとしている。