東邦大学医療センター佐倉病院、がん化学療法患者の副作用管理にTISのPHR基盤導入

2025年2月18日20:55|ニュースCaseHUB.News編集部
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 東邦大学医療センター佐倉病院(佐倉病院)は、TISが提供するパーソナルヘルスレコード(PHR)基盤「ヘルスケアパスポート」を導入した。外来がん化学療法の患者が無理なく副作用症状を報告できる仕組みが整備され、薬剤師が患者の服薬状況や体調の変化をスムーズに把握し、患者に寄り添ったケアができるようになったという。2月18日、ヘルスケアパスポートの導入を支援したTISと東和薬品が明らかにした。

 がん化学療法で使用する抗がん剤の進歩に伴い、治療が在宅・外来へシフトする中で、佐倉病院では、患者の服薬状況や体調変化のモニタリングが課題となっていた。10種類を超える薬を服用する患者もおり、病院とかかりつけ薬局の薬剤師が連携し、患者の体調を管理する必要があった。

 病院薬剤師は、抗がん剤の調製や服薬指導に加え、医師が決定した治療方針に基づき、適切な治療薬や副作用を抑える薬を提案する。患者が外来で治療を受けて自宅療養に移行した後は、薬局薬剤師が処方箋に基づき薬を提供し、フォローを行う。従来、薬局薬剤師は電話で患者の状況をヒアリングしていたが、断片的な情報しか得られず、適切なタイミングでのフォローが難しかった。体調が悪く会話が難しい患者もいるため、新たな手段が求められていたという。

 副作用症状の報告という特殊な用途に対応できるツールはなかなか見つからなかったが、ヘルスケアパスポートの販売でTISと協業する東和薬品から2022年に同製品を提案され、採用を決めた。TISによれば、ヘルスケアパスポートは医療従事者と生活者が健康・医療情報を共有できるサービスで、生活者自身が健康・医療情報を記録・管理するPHRとしての役割と、地域医療連携システムとしての役割の両方を担う。

 佐倉病院は同製品の採用にあたって、がん化学療法における副作用報告に適したカスタマイズが柔軟にできる点や、病院と薬局が同じ報告内容を共有できる情報基盤である点、患者と医療従事者の双方に負担をかけずに双方向のコミュニケーションができる点などを評価したという。

 導入に先立ち、22年後半から約1年間、門前薬局であるあやめ薬局下志津店と共同で、症状報告画面のカスタマイズと技術検証を実施した。重症度別に入力可能な12項目の副作用症状や、5段階で選択できる「体調」、フリーフォーマットの「気づいたこと」の項目を追加し、患者が詳細な状況を簡単に報告できるようにした。「施設間連携メモ」機能も活用し、病院薬剤師と薬局薬剤師が患者のデータを見ながら初期対応を相談したり、副作用状況報告書(トレーシングレポート)を安全に送信したりできることを確認した。

 24年1月から患者にヘルスケアパスポートのアプリ利用を勧めている。以降、約10カ月で延べ50人程度が利用している。患者からは入力の容易さを評価する声や、薬局からの助言や受診の推奨により治療に役立ったという声が寄せられているという。また、導入以前は薬局薬剤師がトレーシングレポートに記載された全ての症状を電話でヒアリングしていたおり、このプロセスにかなりの時間がかかっていた。導入後は適切なタイミングで患者が特につらく感じる症状を重点的にヒアリングできるようになり、適切なフォローがしやすくなったとしている。

 佐倉病院薬剤部の平井成和氏は「病院薬剤師と薬局薬剤師の距離が縮まり、薬薬連携がよりスムーズになった。また、ヘルスケアパスポートが適切な服薬マネジメントに役立っており、副作用対策の薬が活用できずに抗がん剤の量を減らしたり、治療を中断したりするケースがなくなっている」とコメントしている。

ニュースリリース