三菱UFJ銀行は9月16日、店頭に設置したタブレット端末による普通預金口座開設手続きで、eKYCによる本人確認を導入したと発表した。システム基盤としては、キヤノンマーケティングジャパン(キヤノンMJ)の「本人確認支援ソリューション」と日立製作所の「eKYC支援サービス」を連携させ、同日、運用を開始している。タブレット端末に本人確認書類のICチップを読み取る専用リーダーを接続することで、本人確認を厳格化しセキュリティを向上させつつ、顧客の利便性向上と行員の業務負荷軽減を図る。
近年、金融機関では、他人になりすまして口座を開設するなどの金融犯罪が巧妙化しており、社会問題となっている。これを受け、犯罪収益移転防止法(犯収法)の改正が予定されており、2027年4月以降、オンラインや店頭での本人確認にはマイナンバーカードなどのICチップ情報を読み取る方式が義務付けられる見通しだ。
三菱UFJ銀行では、来店客が店頭のタブレットで口座を開設できるサービスを提供しているが、従来のプロセスでは、ICチップ情報を読み取る方式での本人確認に対応しておらず、本人確認書類の券面撮影や行員による目視確認などが必要だった。犯収法改正への対応に迫られていたことに加え、顧客が不慣れな端末の操作に手間取るケースもあり、UXやサポートする行員の業務負荷の観点でも課題があった。さらに、後続システムには本人確認書類を撮影した画像データが連携されていたため、券面の情報を手入力したり、OCRでデジタル化したりするなどの措置が必要で、事務手続きの効率化も進めづらい状況だったという。
今回構築した新システムでは、顧客が口座開設手続きを行うタブレットに、キヤノンMJの個人認証カードリーダー「ID-MY2」をBluetoothで接続する。顧客自身がマイナンバーカードや運転免許証、在留カードをカードリーダーにかざすと、ICチップ情報が読み取られる仕組みだ。さらに、キヤノンMJが提供するSDKを利用して日立製作所のeKYC支援サービスと連携させ、ICチップ情報の真正性を確認し、容貌とマッチングする仕組みを構築した。
ID-MY2は、ICチップ付きの本人確認書類だけでなくキャッシュカード情報も読み取ることができる金融機関専用のデバイスであり、口座開設だけでなく、既存顧客のUX向上も期待できる点を三菱UFJ銀行は評価したという。また、SDKが提供され、さまざまなシステムと柔軟に連携して業務プロセスの最適化やUXを進めやすい仕組みを整えていることも、採用を後押ししたポイントだった。
新システムの導入により、偽造された本人確認書類などによるなりすましを防止し、本人確認のセキュリティレベルを向上させる。また、ICチップから取得した氏名や住所などの情報はタブレット画面に自動で反映され、顧客の入力負荷を軽減できるほか、後続システムにも連携されるため、事務手続きの効率化につながると見ている。従来、行員が行っていた本人確認書類の目視確認や対面での確認作業も不要になり、行員の作業負荷軽減、口座開設手続きにかかる時間の短縮も見込んでいる。