アンドエスティは、公式WEBストア「and ST」におけるユーザー行動の把握と仮説検証の高速化を目的に、プロダクト分析ツール「Amplitude」を採用した。7月9日、同ツールの導入・活用支援を行うDearOneが発表した。大量の行動イベントを探索的に確認できる環境を整えたことで、従来は最大1カ月以上かかっていたインサイトの獲得時間を数分へ短縮したほか、データをもとにUI/UX改善を行う仕組みづくりを実現した。今後はマーケティング部門と連携したページ構成の最適化やA/Bテストデータとの連携などを進めていく。
アンドエスティは、アダストリアグループのファッションEC「and ST」を中核に、モール&メディア事業やプロデュース事業を担う企業である。従来のアパレル業界では、トレンドや商品に対する深い知見に加え、担当者の勘と経験が重要な判断軸とされてきた。しかし、and STが、2170万人以上が利用する公式WEBストアへと成長する中で、事業規模の拡大に見合った、Web上のユーザー行動を細かく把握・分析する仕組みが急務となっていた。
当時の社内BIツールで見られたのは「どの部門で、どの商品が、どれくらい売れたか」といった結果の数値にとどまり、「誰が、どこで、どのように買ったか」という行動レベルの把握までは踏み込めなかった。そのため、ユーザー行動を知るにはクエリ(SQL)を書くしかなく、データも重かったことから、一つのインサイトを得るまでに1カ月以上かかるケースもあり、分析スピードの遅さが大きな課題となっていた。
こうした背景から同社は、大量の行動イベントを事前に特定の中間イベントで決め打ちすることなく、探索的に検証できるAmplitudeの導入を決定した。導入にあたっては、DearOneが2〜3カ月にわたり実践的な分析の「型」を繰り返し共有する伴走支援を提供し、担当者が自ら分析を再現できる体制の構築を進めた。
導入後は、特定の行動を仮定したクエリの修正や再集計の手間がなくなり、数分でインサイトを得られるケースが生まれるなど、データ抽出にかかっていた時間を施策の立案へ転換することに成功した。さらに、発見したインサイトに想定GMV(流通取引総額)とスコアを付与し、インパクトの大きい順に実験・評価を行ってから開発へ連携する、売上向上に向けた改善フローの仕組み化を実現した。
また、施策の方向性にも変化が生じており、これまでの「お気に入り登録でクーポン付与」といったインセンティブ頼みのキャンペーンだけでなく、行動データに基づき「お気に入り登録などの特定行動を自然に促す動線設計」を検討できるようになり、UI/UX改善の選択肢が広がった。現在はAIエージェント機能も活用しており、分析の専門知識がないブランド担当者であっても、数値変化の要因をAIに質問して自ら把握できる環境が整い始めている。
アンドエスティのデータ分析・改善サイクルのリーダーを務める平田氏は、「使えば使うほどROIが出るツールだということを実感し始めている。今後は事業部全体での活用を推進していきたい」としている。