スクウェア・エニックスは、サービス開始から14年目を迎えるオンラインRPG「ドラゴンクエストX オンライン」において、Googleの生成AIモデル「Gemini」を導入した対話型AIバディ「おしゃべりスラミィ」を発表した。3月18日、Google Cloudとスクウェア・エニックスが会見で発表した。この取り組みは、長年運営が続いている同タイトルにおいて、コンテンツが拡大したことで新規プレイヤーが迷ってしまうという課題に対し、新しいコミュニケーションの機能を提供することが目的だ。
スクウェア・エニックスは、日本を代表するロールプレイングゲーム(RPG)の「ドラゴンクエスト」シリーズや「ファイナルファンタジー」シリーズなどを持つゲームメーカーだ。同社は10年以上にわたりゲームにおけるAIの高度な実装や研究開発を続けており、社内には「AI & エンジン開発ディビジョン」という専門部署も有している。
ドラゴンクエストX オンラインは、1986年から続く「ドラゴンクエスト」シリーズ初のオンライン専用RPGである。2012年のサービス開始から2026年8月で14周年を迎え、現在も月数十万規模のプレイヤーに親しまれている。開発当初から「ドラゴンクエスト好きが集まる遊園地」をコンセプトに掲げており、プレイヤーが提供された遊びだけでなく、SNSやイベントを通してプレイヤー間の交流が大きな特徴となっている。
今回AIモデルのGeminiを導入した対話型AIバディ「おしゃべりスラミィ」開発の背景には、ドラゴンクエストX オンラインの遊園地の拡大という課題がある。14年にわたるアップデートにより、ゲーム内には膨大なコンテンツが構築されたが、新規プレイヤーがどこから遊んでいいかわからないと迷ってしまうケースが出ている。
シリーズの生みの親である堀井雄二は、従前の、クエスト等で会話するだけのNPC(プレイヤーが操作しない固有キャラクター)にAIを組み込むのではなく、「一緒に冒険し、困ったときに教えてくれる友達や相棒としてAIを活用したい」というようなことを語っていた。これを受け、プレイヤーのこれまでの冒険を記憶し、状況に応じた会話ができるAIバディの構想が立ち上がった。
スクウェア・エニックスがAIの相棒としてGoogle CloudのGeminiを選定した理由は、高い先進性と拡張性にある。スクウェア・エニックス AI&エンジン開発ディビジョンの荒牧岳志は、具体的な選定理由として以下の3点を挙げた。
1つ目に、最新のライブAPIであるGemini Live APIによる、リアルタイムな高い応答性だ。AIとの会話においては、遅延は没入感を削ぐ大きな要因となる。Gemini Live APIは低遅延でマルチモーダルな対話を可能にする。荒牧氏は、この機能を活用することで、プレイヤーの問いかけに対し遅延なく自然に応答できるユーザー体験を提供できると説明した。
2点目の理由は、世界観に合わせた高度なカスタマイズ性だ。単にAIモデルをそのまま利用するのではなく、世界観や設定の調整や出力チェックを行うことで、ドラゴンクエストらしさを保ち、ゲームの世界観を損なわない応答生成を行っている。また、固有のキャラクターに合わせたボイスの生成も同時に行い、テキストと音声の両方で「生きている」感覚を創出する。
最後の理由として、マルチモーダル機能の活用が挙げられる。AIはゲーム画面の画像や文字情報を認識しており、プレイヤーの現在の行動や服装の変化を察知して自発的に話しかけられる。これにより、単なる検索エンジン的な応答に留まらない、双方向のコミュニケーションが可能となった。これらはGoogle GeminiとGemini Live APIの組み合わせにより実現している。
今回の取り組みは、プレイヤー体験の向上だけでなく、ゲーム開発手法の変革も提示している。Google Cloud ゲーム インダストリー グローバル ディレクターのジャック・ビューザー氏は、AIによる開発の効率化を「アイアンマンのスーツ」に例え、開発者がよりクリエイティブな領域に集中できる環境をもたらすと強調した。
これに関連して、スクウェア・エニックスの「ドラゴンクエストX オンライン」ショーランナー 安西 崇氏は、同社ではすでに開発工程でAIを活用していることを明らかにした。たとえば、プランナーが服装などのイメージを伝える際、画像生成AIを用いて視覚化することで、デザイナーとの情報共有を効率化している。
今後の展開について、安西氏は「オンラインゲームで遊ぶとき、目の前のキャラクターの中に誰が入っているかは重要ではない。AIがそこに入ってきても、さらに自然に遊べる新しい未来が来るのではないか」と語る。
スクウェア・エニックスは、2026年3月21日から3月30日まで「おしゃべりスラミィ」のクローズドベータテスト参加者の募集を実施した。実際のプレイヤーに対応できるか負荷などを検証し、正式サービスに向けた準備を進めていく。